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第19話

「あ、赤城___くん……!?」 「うん、何だい……アリサちゃん?オレは君の事が大好きだから――何でも聞いていいんだよ?」 唐突に、ダイイチキュウで見たゲームやアニメなんかに出てきて、いかにも王様の格好から元クラスメイトの赤城くんの姿へと変わった彼へと遠慮がちに尋ねる。 「あ、あの……この____兎耳山は……どうしてこうなってるんですか?」 つい、敬語口調になってしまう____。 「ん……ああ、ミトの事が__そんなに気になっているのか……アリサちゃんに限ってそれはないとは思うけど、ミトに惚れちゃダメだよ?なんたって、ミトは__」 「お、お母さま……っ__あの、お父さま……今回は、お母さまの容態は大丈夫なのでしょうか?前回、ダイイチキュウに戻られた時よりも疲弊しているのでは?」 今まで何も言わずにチラチラと心配そうに倒れている兎耳山に目線を向けていただけのミズリアが、ようやく行動に移した。体を揺さぶってもびくともしない兎耳山の様子を見てミズリアの不安はピークに達したのか目に涙を浮かべている。 そして、ミズリアは不安げな表情を浮かべつつ俺の方を見つめてきた。 そんなミズリアの様子を見て見ぬ振りをしてから、ミラージュの王様は愉快げに微笑む。 「____ミトはオレの所有物だからね。このミラージュの王妃という肩書きのうえでの所有物。だから、ちょっとだけ利用しちゃってこんな事になっちゃったけど__優しいアリサちゃんなら許してくれるよね?」 ニッコリと微笑みかけてくるミラージュの王に対して怒りが沸き上がる。確かに、俺は兎耳山の事が苦手だった。しかし、こんな酷い目にあわせておいて助けるどころか、所有物だからこうなっても当然だといわんばかりの態度を見て怒りを通り越して呆れつつも俺はジロリとミラージュの王を睨み付ける。 「兎耳山に掘れる、とか__そんな話じゃなくて……彼はぐったりしているのに、心配しないんですか?王妃なんだから__あなたの妻なのに……愛する人なんでしょう?」 このまま放置されたままなのは、いくらなんでも兎耳山が哀れすぎる__そう思った俺は、思わず彼の体を抱き上げて乱れた服を整え直した。 「あーあ、可愛い顔が台無しだよ……アリサちゃん。それとも、この姿なら君の怒りを和らげられるかな?それと、誤解なきよう言っておくけど――オレとミトの間に愛なんてものは__存在しない。彼は、単なるオレの所有物だからね」 ふっ…………と瞬間移動したミラージュの王は《元クラスメイトの赤城くん》の姿から今度は《今は行方不明中の猫山》の姿となって戸惑うことしか出来ない俺の耳元に触れるか触れないかくらいまで近づくとヴァリトンボイスで低く囁きかけるのだった。

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