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第2話 皇者

その日1限から始められたテストは5限まで続いた。 技術が発展したこの世界ではテストを受けたその日に結果が出るようになっている。 6限を使って1人1人に封筒を手渡しその中にある紙に学年の順位と各教科の点数のみが記載される。 これは自慢ではないが俺は入学してから常に首席だ。まぁ、αである俺には当然と言えば当然。 だが、その日だけは違った。 「嘘…だろ…。」 渡された紙には2位とそう書かれていた。 俺は自分の目を何度も疑ったが何度見ても同じ。社会と国語は1位だが、数学と英語、理科は2位だった。 俺は初めて屈辱を味わった。 ー次の日ー 俺は部活の朝練の後に急いで職員室横の掲示板に張られる学年順位を見に行った。 すでに人がたくさん集まりざわめいている。俺はその群衆を掻き分け掲示板を見た。 [1位] [須藤 一輝] [2位] [眞田 真実] 1位はあいつだった。 俺を見かけた群衆は口々に言う。 眞田が負けた。 皇者が落ちた。 嘘だろ。須藤って転校生だよな?。 キャー!眞田君がー! はは。格差社会とはよくいったもんだ。 首席であり続ければ褒め称え人は媚びうる為に寄ってくる。 逆に俺を妬んで嫌がらせをしてくる者もいたが、自分の生まれ持った能力に甘んじているからだといい放ち黙らせる。 なんだ。結局俺も自分の能力に甘えていたのか。 今一度ショックを受けた俺は膝から崩れ落ちた。 「おい、そんなとこで座ってんじゃねーよ!」 そう背後から腕を捕まれ1人の男に連れ去られた。 「離せ!離せよ、このやろう‼」 廊下まで連れられた俺は思いっきり手を振りはらった。俺の力が強かったのか、痛ったと相手は肩を押さえる。 「なんだよお前!同情のつもりかよ!編入して早々もう王様気取りか!バカにするのも大概にしろよ」 俺を連れ去った男は昨日来たばかりの須藤だった。 「同情ねぇ。そんなのあるわきゃねぇだろ。あいにく俺は自分のことで精一杯だ。俺があそこにいるにも関わらず公衆の面前で膝まつかれて、こっちのみにもなれよ。だからαは嫌いなんだ。自分の力を過信して負けたらこの世の終わりみたいな顔しやがって。みてるこっちは胸くそ悪いわ」 そう言った彼は息切れしていた。 香水を付けているのかふわりと漂う匂い。 その匂いはΩ特有のフェロモンのような匂いにも思えたが俺にはヒートの症状は出ていない だが、目の前にいる男は息切れが段々と過呼吸の様にヒュー、ヒューと言い始め、その場に倒れこんでしまった。 俺はすかさず駆け寄り声を掛けるが返事はない。さらには息を荒げ、腹を押さえていた。彼の額にはじわりと滲む汗。 まずいと思い俺は咄嗟に自分の身長より満たない男を抱きかかえ急いで保健室に向かった。 かかえられた彼は身長にみあわずとても軽かった。

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