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第3話 発情期

俺は男を抱きかかえ保健室に向かっていた。 保健室に行く最中、彼はうわ言のようにずっと同じことを呟く 「やめて、それだけは… 」 「僕を、これ以上……。」 これの繰り返し。過去に何があったかは知らない。だが、今までこいつが発してきた口調とは明らかに違った。 ー保健室ー 保健室に着いた俺は保健医に事情を説明してベットを借りた。保健医は席を外すから付き添ってもらえるか、といい1限はそのまま俺が付き添った。保健医は女の人だ。 その間も彼は目を覚ますことはなく、たまに腹痛を訴えるようにお腹を押さえるため俺は腰をさすってあげた。 これは前に保健体育の授業で聞いた話だが、 Ωには月に1度体調が崩れる時がある。 人により個人差はあるが腹痛になる者、高熱がでる者。 女性は子宮がある為、月経になるが腹痛などはΩにしか現れない。 逆にΩの男は子宮はないが自身の持つ精子と卵子が授精しない様に毎月、耐性を作る準備として腹痛を起こす。本当に酷い時は吐血することも。 腹痛などを起こした人はみんな発情した犬のように見える為、世間ではこれをまとめて[発情期]と呼ぶようになった。 そして目の前で腹を押さえているこいつの症状は俺には[発情期]にしか見えない。 さらに発情期になったΩはとても濃いフェロモンを発する。 始め俺は彼が香水をつけてるだけだと思ったが、Ωだと疑い始めたにつれその匂いは濃さもました。 彼は小さな喘ぎ声を漏らす。 「ック…。ハァ…ハァ…。いた…い、よ…。」 夢でも見ているのだろうか。 すると閉じていたカーテンを開けて保健医が入ってきた。 「眞田君付き添ってくれてありがとう。今、親御さんに連絡入れて迎えに来てもらうから君は授業に戻っていい。後は先生に任せて」 そう声を掛けられ俺は席を外す。 女の人だし彼の匂いに当てられることはないだろう。 そう思って俺は教室に戻った。 次の授業は保健体育だ。

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