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春の嵐 4
その迷子くんは、同じ学年でクラスが隣、それに朝はだいたい遅刻すれすれで廊下を走ってる。
そして見かける度に迷子になっている。
そしてある日も案の定迷子くんは迷子真っ最中。
もうすぐ呼び鈴なるのになぁ……
アイツ……学習能力ゼロだろ。
オレは、生徒会顧問の望月 に次の会議で使う資料を渡さないといけない理由で、望月の授業が終わるまでをそこで時間を潰していた。
そんな矢先に迷子くんを見かけ、ちょうど時間もあることだしと声をかけてみることに。
「お前、どこ行きたいの?」
「…………え?」
「行きたい教室行けなくて迷子になってんだろ?」
「な、なんで迷子ってわかるんですか?」
「いや、だって……」
何回も迷子になってるじゃんて言おうとして思い留まった……なんかオレ、ストーカーみたいじゃねーか。
「だって……さっきから見てたら行ったり来たりしてるから。」
「え……ずっと見てたんですか?」
「ち、違うから、たまたまだし」
なんだよ、結局ちょっと誤解されてんじゃん。
でも、まぁ別にいいんだけど。
そんなことよりとりあえず話を進めないと。
「あのさ、もうすぐ呼び鈴鳴るぜ?どこに行きたいんだよ」
「えっと……音楽室」
「音楽室?!お前さっき、理科室の方歩いて行ってたじゃん。逆だよ逆。音楽室はあっちの別棟」
「え?そうなの?!」
いい加減呼び鈴鳴るからと道を説明してやったら、ずっと斜め下ばっか見ながら話してたのに突然顔を上げ、クリックリのデカい目で驚かれた。
「そうだよ、あっち。もうすぐ授業始まっちまうぞ、早く行けっ」
「あ、うん!ありがとう!」
そして、満面の笑顔で礼を言われた……
「…………あ、ああ…………」
「じゃあ!」
足早に渡り廊下を走る足音
さっき聞いたアイツの弾けるような明るい声
そして、あの笑顔
ふと窓の外を見ると風で桜の花びらがはらはらと舞っていて、
オレはなんだかいつもとは違う気持ちで、
気付いたらその桜を見ていた…………
桜、
綺麗だな·····────
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