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春の嵐 6

そんな原因不明な事態が数回続いたある日、オレは珍しく寝坊をして登校時間がギリギリになってしまった。 予鈴が鳴る頃に校門をくぐり足早に下駄箱に急ぐと、偶然にも同じ下駄箱の列に焦りながら上履きに履き替えてる奴が1名…… あ……迷子くんだ…… チラッと横目でそいつを見ると、寝ぐせが付いた髪を振り乱しながら靴を必死に履き替えながらブツブツと何か言っているようだった。 何を言ってるかはわからないけど、何か文句を言ってるみたいで、オレの存在なんて全く気付いてないらしい。 それが逆に可笑しくて暫く眺めていると、今度は凄い勢いで廊下を走って行ってしまい、あっと思った時には既にオレの視界から消えていた。 なぜかその、ふっと現れては過ぎ去る台風のようなアイツの行動が面白くて、誰もいない下駄箱でふっと吹き出してしまった。 ほんと、相変わらず忙しい奴。 一人になったそこで吹き出していると、もう、時間がないとか遅刻するとかそんなことさえなんかどうでもよくなってきて……そんな時にふと思いついた。 そうだ、アイツって名前…… そして、さっきまでアイツがいた下駄箱の前まで歩みを進めてみる──── 「……相原(あいはら)……(なぎさ)?」 ……と、下駄箱に書かれあるその名前を見た時、思わず声に出してしまった。 渚………… 名前を知った…… ただそれだけなのに、なぜか胸の奥がざわついて、 「渚……」 気付いたら繰り返すようにまたその名前を口にしていた。

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