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春の嵐 10
「ダイは彼女とかいるのか?」
「え?!急にどうしたの?」
「いや、なんか……ちょっと聞きたいことがあって」
気付くとどうしてもあいつの事を考えてしまう日常にもうそろそろ限界を感じ、自分なりに白黒付けようと思い始め......放課後の生徒も疎らになった教室でダイにとある事を聞いてみた。
「いや……今はいないけど。でも聞きたいことってなに?」
「あのさ……人を好きになるきっかけて、くだらない単純な理由とかもありえたりするわけ?」
「例えば?」
「例えば……笑顔が可愛かったとか、不意に見せる照れた顔が可愛かったとか……」
人はこんな理由でも恋に落ちるのか、正直まったく基準が分からない。
だから聞いただけなのに、ダイは軽く鼻で笑いながらリュックのファスナーを閉めため息を小さく吐いた。
「……ゆうちゃん、可愛いしか言ってないの自分で気付いてる?」
「は?!からかってないで真面目に答えろよ」
オレをよく知ってるからこそ、ダイは面白がってるに違いない。
たくっ……かっこわりーな……
「ごめんね、そんなつもりはなかったんだけどつい面白くて」
ほら、やっぱり
「おい、いい加減にしろよ」
「じゃあ、真面目に答えるけど、人を好きになる時なんて一瞬だよ?仕草や表情、性格……たったそれだけのこと?て、ことでも十分に人は恋に落ちる」
「じゃあ……」
「だから、答えはイエスだね。気付いてるかもしれないけど、ゆうちゃんはその子のことを好きなんじゃないかな?違う?」
あまりにも直球な答えが来たからなかなか返事が出来ないでいるオレにダイは更に話を続けた。
「その子って……もしかして、あの子じゃない?前に道案内してあげた……」
「おまっ!なななんでわかるんだよ!?」
「何年の付き合いだと思ってるの?ゆうちゃん見てたらすぐ分かるよ?」
そう言って、席を立ちスタスタと教室を出て行こうと歩き出す。
「おい、待てよ!」
ダイのあとを追って、もう誰もいない教室を2人で出てガラッとドアを閉めると廊下を歩き始める。
「……ゆうちゃんにもやっと好きな子が出来たのかぁ~」
「まだそうと決まったわけではないだろ」
「でも、そんなこと聞いてくるなんて初めてだもん、きっとそうなんだと思う。いいなぁ……僕も夢中になれるくらい好きな人が欲しい……」
「夢中て……」
「とにかく、僕は応援してるからね!頑張って!」
そう背中を押された視線の先には夕焼けに染まる空が広がっていた────
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