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第1―6話

そして元旦。午前0時ジャスト。 小野寺のスマホが鳴る。 家族で「明けましておめでとう」と言い合っている中、部屋の隅でメールを見る。 小野寺の胸がドキッと音を立てる。 高野から。 『明けましておめでとう。 今年もよろしく』 ただそれだけ。 ただそれだけだけれど、小野寺は嬉しくなる。 赤面しながら即返信をする。 『明けましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いいたします』 素っ気ないかな…? いやいや男同士、上司と部下ならこんなもんだろ…!! 「律?どうしたの?顔が赤いわよ?」 母親の声にハッとする。 「べ、別にっ!」 小野寺はそっと高野からのメールに保護をかけるのだった。 午前0時2分。 『木佐さ~ん!明けましておめでとうございます~!! 今年もよろしくお願いしま~す!! 大好きです!!』 木佐に雪名から届いたメールはハイテンションMAXな動画だった。 雪名がドアップで、これでもかとキラキラしている動画が映し出される。 余りに雪名がカッコ良すぎてドキドキしてしまう。 しかも『大好き』って…!! 木佐の顔がぶわっと赤くなる。 とりあえず木佐はメールに保護をかけ、『明けましておめでとう。今年もよろしくな』とだけ返信すると、動画を繰り返し観るのだった。 午前0時5分。 羽鳥のスマホが鳴る。 羽鳥は携帯を持つようになってから、吉野に毎年0時ジャストに『明けましておめでとう。今年もよろしく』とメールを送信している。 吉野からの返事はその年によって様々だ。 寝てしまったり酔いつぶれて元旦の10時過ぎに返信が来ることもあるし、メールが面倒になって羽鳥のメールの直後に電話が掛かってくる事もある。 逆に吉野も0時ジャストにメールしてきたり。 今年はリビングで飛び跳ねている画像に(たぶん千夏が撮らされたんだろう)、 『明けましておめでとう~!! 今年もよろしくな!! 年明けに地球にいない俺!』 というメッセージ付きだ。 羽鳥はため息をつく。 元旦の0時0分0秒にジャンプするのは、吉野が小学生の頃からのお気に入りの行為だ。 あいつは漫画を描くこと以外、成長が止まっているのか…? そんなことを考えながらも、画像の中で得意気に笑っている吉野のかわいさに羽鳥は微笑んでしまう。 そしてピクチャフォルダの『千秋』のフォルダーに画像を移し、いつものように保護をかけるのだった。 元旦、午前11時。 ホロ酔いでいる横澤のスマホにメールが届く。 桐嶋からだ。 横澤は日和と年賀状を出し合おうと約束して実行していたので、どうせ桐嶋も見るんだし…とあけおめメールはしていなかった。 第一、恥ずかしい。 年が明けたから即メールなんて、いい大人がやるものか!?と思うし、浮かれてメールしたのかと勘違いされるのも嫌だ。 桐嶋のことだから、絶対にからかってくるのは目に見えている。 そして今、桐嶋から届いたメールには。 『明けましておめでとう。今年もよろしく』という文字と画像が3枚。 1枚目はどこかの神社で仲良く寄り添って立つ、和服姿の桐嶋と日和。 桐嶋の和服姿の渋いカッコ良さに見とれてしまう。 それに日和も凄くかわいい。 横澤の頬が緩む。 2枚目は日和の後ろ姿。 髪型と帯までのアップだ。 髪型も帯の形も凄く凝っていて、日和に良く似合っている。 かわいいなあ… 何て返事をすれば喜んでくれるだろ… 計らずも結局浮かれてしまう自分に苦笑する。 だが3枚目の画像を見て、横澤は固まる。 桐嶋の顔のドアップだが、ウィンクをしている。 それだけならまだ良い。 その画像は完璧に加工されていて、まず画像のフレームが大小様々なビジューで彩られていて、その上桐嶋の左上からライトが当てられたように光っていて、ウィンクしている右目に光が集まり、そこからハートマークのシャワーが溢れている。 そして顔の下には。 『明けましておめでとう。 桐嶋さん、今年も愛してる!! by 隆史』 とラメ入りの真っ赤な文字が入っている。 あんの…バカヤロー!! 新年から阿呆らしいことしやがって!! 横澤は真っ赤になって、メールを閉じる。 そしてグラスに残っていた日本酒を一気飲みすると、日和だけにメールを返すのだった。

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