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第1―7話
そして翌日、一月二日。
高野と小野寺が新宿の花園神社からほど近い、肉料理メインの店から出て来る。
「特製上州牛ダブルチーズバーガー美味しかったですね!!」
小野寺がニコニコと高野を見上げる。
高野がポンと小野寺の頭に手を置く。
「どうせ昨日はおせち料理と餅三昧だったんだろ?
明日もそーだろうし。
ちょっとは気分が変わっていいだろ?」
「はい!」
小野寺は元気良く返事をすると、顔を赤くして俯くと呟いた。
「花園神社も初めてお参り出来たし…高野さんと一緒に…」
「お前と初詣が出来る日が来るなんてな」
高野の感慨深げな声に、小野寺が思わず顔を上げる。
高野のやさしい眼差しに視線がぶつかって、小野寺の顔がぼぼぼっと赤さを増す。
高野が甘く囁く。
「なあ、小野寺。
温泉行かないか?」
「お、温泉って…今からですか!?」
「あ、わりー。正確に言うと健康ランド。
ここからタクシーで5分なんだけど、井坂さんの友人が建てたとこで、井坂さんから開店前のリサーチ頼まれててさ。
しかも俺達で貸し切り。
草津直送の露天風呂もあるんだと」
「へえ…凄いですね」
「まだ昼だろ。
メシも自信あるっつってたし、マッサージとか他の施設も充実してるみてーだし、夜までゆっくり風呂に入っていかないか?」
「た、高野さんと二人きりで温泉…」
高野が小野寺の肩を抱く。
小野寺を抱き寄せ、また甘く甘く高野が囁く。
「お前とゆっくり正月を楽しみたい」
「……はい」
小野寺は真っ赤な顔で頷いた。
木佐と雪名が新宿の花園神社からほど近い、メキシカン料理の店から出て来る。
「アボカドがアクセントになってて美味かったっすねー!!」
キラキラオーラ全開の笑顔で雪名が言う。
「まあ料理は美味かったけど、客の99パーセントは女子だったな…」
そしてその99パーセントの女子の視線を一人占めしていたのは、勿論雪名だ。
雪名と一緒にいる童顔美少年の木佐も、食事中女の子から視線を浴び続けていたのは言うまでもない。
「俺、超嬉しいっす!
木佐さんと初詣できたし。
花園神社も初めて行ったし。
木佐さんと初めてづくしで…」
雪名が木佐の両肩を掴んで、本当に嬉しそうに笑う。
ズッキューン。
雪名の笑顔が木佐のハートを撃ち抜く。
「雪名…」
ウットリと雪名の顔を見つめる木佐に雪名が続ける。
「まだ時間早いし、このまま帰るの勿体無いし、どっか行きません?」
雪名の言葉に、木佐が体勢を立て直し、待ってましたと口を開く。
「ここからタクシーで5分のところに、オープン前の健康ランドがあるんだ。
そこ行ってみねえ?」
「オープン前、なんですよね?
大丈夫なんすか?」
小首を傾げる雪名に、木佐が畳み掛ける。
「大丈夫!
うちの社長の友達が建てたんだけど、オープン前にリサーチして欲しいって頼まれててさ。
今日は俺達二人で貸し切り!
草津の湯の露天風呂もあんだぜ!
それに館内の風呂以外の施設も超充実してるしさ、メシも美味いらしいし、夜まで二人で遊び放題ってどうだ!?」
「うわー!!スッゲ!!
超行きたいっす!!」
「よし!じゃあ早速タクシー拾おうぜ~」
雪名と木佐は道路に向かって同時にサッと片手を挙げた。
羽鳥と吉野が新宿の花園神社からほど近い、釜焼きスフレパンケーキで有名な店から出て来る。
「あ~美味かった!!
焼き上がるのに20分待ったかいがあった!!」
「良かったな」
ニコニコ顔の吉野に羽鳥が微笑む。
「トリのパスタはどうだった?」
「絶品だった。
パンケーキ以外もクオリティが高い良い店だな」
「うん!また来たいなー」
「いつでも連れて来てやるよ」
「さんきゅ、トリ。
それにさあ花園神社も初めて行ったけど、スッゲー雰囲気良かったよな!!」
「お前、写真撮りまくってたけど、資料になりそうか?」
「なるなる!
次はどこ行くの?」
吉野がわくわくした顔で羽鳥を見上げる。
「健康ランド」
「…健康ランド?」
思いもよらなかった単語に吉野がキョトンとする。
「井坂さんの友人が建てた健康ランドのオープン前のリサーチを頼まれているんだ。
しかも今日は俺達二人の貸し切りだ。
風呂が充実しているのは勿論で、草津直送の露天風呂もあるそうだ。
それに風呂以外の施設も充実していて、メシにも自信があるらしい。
場所もここからタクシーで5分。
どうだ?」
「行きたい!」
吉野が頬を紅潮させて即答する。
羽鳥も笑って「じゃあまずはタクシーだな」と言った。
桐嶋と横澤が新宿の花園神社からほど近い、煮干ラーメンで有名なラーメン屋から出て来る。
「あー美味かった!」
ほくほく顔の横澤に桐嶋が微笑む。
「口に合って良かった。
煮干メインだから好き嫌いがあるからな」
「いや、全然平気だったし!
花園神社も初めて来たし、裏手のゴールデン街にあんな美味いラーメン屋あるなんて知らなかったし…何か正月から得した気分だ」
「もっとお得気分を満喫させてやる…って言ったらどうする?」
桐嶋の流れるような視線に横澤が赤くなる。
「な、何だよ…っ…」
「井坂の友達が健康ランドを建てたんだよ。
そのオープン前のリサーチを頼まれててな。
風呂も本格的で草津の湯の露天風呂まであるらしい。
施設も充実してるし、食事も自信あるってさ。
場所もここからタクシーで5分だ。
それに…」
桐嶋が横澤の肩に手を置いて、横澤の耳元で囁く。
「今日なら俺達二人で貸し切りだ」
桐嶋の美声と吐息に横澤がカーッと真っ赤になる。
「どうだ?隆史。
夜までゆっくりしないか?」
桐嶋が横澤を更に抱き寄せようとして、横澤がプイッと横を向く。
「お、俺は仕事として行くんだからな!
リサーチメインだ!
それなら付き合う」
桐嶋がにっこり笑う。
「それで十分だ。
さあ行こう」
桐嶋と横澤は大通りに向かって、並んで歩き出した。
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