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第1―9話
木佐は一瞬で事情を悟った。
木佐と高野は同じ考えだったのだ。
まず、正月早々、しかもハッテン場のリサーチなんて馬鹿馬鹿しい、絶対行かない、というポーズを取る。
そこで井坂に誘われた全員が行かないとなったところで、井坂にこっそり『リサーチには行きますけど、他の人と一緒になるのが恥ずかしいから内緒でお願いします』とか何とか連絡しておく。
そして恋人と二人っきりでアレコレして、健康ランドを思いっきり楽しむ!!
そりゃそーか…
木佐がため息をつく。
あの律っちゃん大好き高野さんが、こんなチャンス逃す訳ないよなあ…
ため息をついた木佐を心配するように、雪名が後ろから木佐の顔を覗き込む。
「木佐さん?どうかしたんですか?
風呂入らないんですか?
つか…人の声、してません?」
「ゆ、雪名…」
木佐が引きつった笑顔で振り返る。
「社長、他にもリサーチの人、頼むようなこと言ってたから…。
ほら、リサーチって多いほど良いじゃん?
色んな意見が聞けて」
雪名は「そうっすよねー」と笑顔で頷いている。
「で、でもさあ…流石に知り合いだったら真っ裸で会うの気まずいし、なるべく避けようぜ…」
雪名はウンウンと頷くとキラキラオーラ満載で笑って言った。
「そうっすよ!
俺も木佐さんの裸、正直誰にも見せたくないし!
俺も協力しますから、俺達は俺達だけで楽しみましょう!」
「雪名~!」
木佐と雪名は腰にタオル一枚を巻いた格好で抱きしめ合った。
木佐と雪名は高野と小野寺に気付かれないようにそーっと大浴場に入ると、高野と小野寺から死角になっている場所で、なるべく音を立てないようにかけ湯をして、これまた高野と小野寺の死角になっていて、なおかつ一番離れた洗い場にバスリリーを手に向かった。
「高野さん、背中流したからもういいですよね?」
「は?全身洗ってくれねーの?」
「あんたは阿呆かっ!!」
「じゃあ俺がお前の全身を洗ってやるよ」
「絶対嫌です!!」
高野と小野寺のいつもの不毛な言い争いが聞こえてくるが、木佐は全身全霊でシャットアウトする。
雪名は楽しそうにバスリリーでモコモコと泡を作っている。
その泡を木佐がそっと掬う。
「木佐さん?」
木佐が自分の身体の前面に泡を塗りたくると、バスチェアに座る雪名の前に跪く。
「雪名…」
木佐の色気の溢れる視線に雪名は動けない。
木佐が雪名の首に手を回す。
「俺がお前を洗ってやるよ。
俺の身体でな」
「木佐さん…」
雪名の声が掠れる。
木佐は雪名の唇にチュッと音を立ててキスをすると、雪名の胸板に泡だらけの自分の胸板を擦りつけた。
それから木佐は、正に自分の全身を使って雪名の身体をバスリリーで作った泡で洗ってやった。
身体で洗えない部分は手を絡ます。
雪名は「はっ…あぁ…」と呻き続けている。
そして最後に凶暴に勃ち上がった雪名の雄に木佐の雄を擦り付ける。
泡だらけの雄同士は面白いように滑る。
その上、木佐の手が二本を包み、淫らに動く。
「木佐さん…俺もう…」
「俺も。雪名一緒にイこ…」
木佐の手に力が込められた瞬間、雪名が爆ぜる。
木佐も白濁を散らした。
それから木佐と雪名はお互いをシャワーで流し合って、洗い場から一番近い『ジェットバス風呂』と表示されたお湯に入った。
手で掴む柵で5ヶ所に仕切られていて、全面からジェット水流が流れてくる。
「うわっ。スゲこれ。身体浮くぞ!」
木佐が楽しそうに柵を掴んで、水流に身を任せプカプカと浮く。
対して雪名は背中から水流を浴びている。
「木佐さん、後ろからだとマッサージされてるみたいっすよ!
超気持ち良いっす!」
「マジ!?」
木佐も水流に背中を向けようとして、雪名と目が合う。
二人の視線が絡んで、木佐がゆっくりと瞼を閉じる。
雪名の唇が木佐の唇を塞いだ。
……なんだ、これは!?
羽鳥は大浴場の入り口で、腰にタオル一枚巻いただけの姿で固まっていた。
羽鳥の後ろにいる、やはりタオル一枚を腰に巻いただけの姿の吉野を庇うように、羽鳥が前を向いたまま吉野に腕を回す。
「トリ?どした?入らないのかよ?」
吉野も羽鳥の態度に不安を感じたのか、小声で訊く。
羽鳥の目には、全身泡だらけでギャーギャー言い争っている高野と小野寺、一番奥の風呂で激しく口づけを交わしている木佐と雪名が映っていた。
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