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第1―10話

羽鳥も木佐と同じ。 一瞬で事情を悟った。 じゃあ、どうするか。 チラリと後ろを見る。 吉野が不安げな顔で縋りつくように、上目遣いで羽鳥を見上げている。 その小さな顔の下は、羽鳥を欲情させてならない真っ白な細い裸体が腰のタオル一枚で覆われているだけだ。 羽鳥は飲み会で井坂の話を聞いて、後日送信されて来たメールを見て、既に心は決まっていた。 恥ずかしがり屋の吉野は、自宅でさえ、なかなか風呂にも一緒に入ろうとしないし、セックスともなれば寝室以外嫌がる。 たまに羽鳥の勢いに押されてソファでシテしまうこともあるが、やはり寝室とは吉野の乱れ様が違うし動きも制限される。 それが、ベッド以外で好き放題出来るチャンスなのだ。 ここまで来て諦めるなんて出来っこない。 羽鳥は振り返ると吉野を安心させるようにやさしく微笑んだ。 「どうやら井坂さんはリサーチの精度を高める為に、他の人にも頼んだみたいだな」 「あ、そうなんだ」 吉野がホッと息をつく。 「まあ知り合いかもしれないが、裸でわざわざ会うことも無いし、気付かれないようにするか」 「うん。 な、なんかやっぱ恥ずかしいよな…」 照れ臭そうに伏し目がちに顔を赤くする吉野を、既に押し倒したくなる羽鳥だが、これからの『やりたいことリスト』を考え、理性を総動員して何とか堪える。 二人で音を立てないように浴場に入る。 高野と小野寺は、今度はシャワーを使って戦っているらしい。 木佐と雪名は熱烈キス続行中だ。 これならば、気付かれることも無いだろうと、二組のカップルから死角になる場所で羽鳥が吉野にかけ湯をしてやる。 自分にもざっとかけ湯をすると、吉野がバスリリーを見付けて「こんなでっかいバスリリー初めて見た!」とはしゃいだ声を上げた。 「そうだな。かなり泡立つだろうな。 今日は俺がお前を洗ってやるよ」 「やった、らっき! じゃあ俺もトリを洗うから」 羽鳥に手を引かれて高野や木佐達から次に死角となる洗い場にうきうきと歩く吉野に、羽鳥は頬が緩んでしまう。 洗い場に着くと羽鳥は早速バスリリーを使って吉野を全身泡まみれにした。 そうして吉野の背後にバスチェアごと移動する。 羽鳥の大きな手にはモコモコの泡の山。 「吉野、足を広げろ」 「や、やだ…自分で出来る…」 そう、吉野は足の指の間に至るまで泡だらけだが、股間だけは素肌が露出している。 「仕方無いな」 羽鳥は泡の山を吉野の足の付け根を置くと、両手でガバッと吉野の足を開き、すかさず吉野の雄を掴む。 吉野の身体がビクッとしなる。 だがもう後の祭りで、足の付け根に置かれた泡ごと陰嚢から茎までやわやわと揉まれてしまう。 「んんっ…や…やだぁ…」 「何が嫌だ?洗ってるだけだぞ?」 「う、嘘つき…!」 「嘘っていうのはな」 鏡に映る羽鳥がニヤリと笑う。 「こういうことを言うんだよ」 その瞬間、後孔に泡だらけの指が一本差し込まれる。 「やっ…トリ…指抜けよっ…」 「いいから一回出しとけ。 後がラクだぞ」 「はあ!?」 後…?後って?? つかここ健康ランドの洗い場で… 他にも人がいて… だが吉野の考えも直ぐに霧散してしまう。 羽鳥にモコモコの滑る泡で満遍なく手淫され、あまつさえ後孔の中の指は増やされていく。 「あっ…は、あん…やだ…やぁ…」 羽鳥の目は吉野の雄に釘付けだ。 白い泡からひょこひょこと顔を出す、薄桃色の吉野自身がエロくてかわいくて堪らない。 羽鳥自身も凶暴に猛っているが、吉野の蕾から細い背中に滑らせるだけで甘く痺れる。 羽鳥が三本の指を中でグリッと折り曲げて、前立腺を抉る。 吉野の雄を扱く指にも力を込める。 「やっ…やーっ…出るっ…」 「いいよ、出せ」 「ああんっ…出ちゃう…アアッ…やーッ…」 吉野が白濁を溢れさす。 羽鳥も吉野の背中に欲を放った。 その時。 高野と小野寺は、小野寺の寄るな触るなから始まったシャワーでの戦いがピタリと止まった。 「ああんっ…出ちゃう…アアッ…やーッ…」 という声が浴場に響いたからだ。 高野と小野寺はシャワーを出しっぱなしにしながら、見つめ合った。 「…俺達以外にも誰かいるな」 高野の問い掛けに、真っ赤になって小野寺が頷く。 「し、しかも、何か…その…してますよね?」 「どうせ木佐あたりだろ。 俺達もいい加減風呂に入ろうぜ」 「……そうですね」 さっきの声で完全に毒気を抜かれた高野と小野寺は、シャワーを止めて立ち上がった。 木佐と雪名が唇を離し、パッと離れる。 「ああんっ…出ちゃう…アアッ…やーッ…」 という声が浴場に響いたからだ。 木佐は心の中で小野寺に同情する。 律っちゃん…あの様子じゃまだ来たばっかで、温泉にも入ってないよね? まあ俺も人のこと言えないけど、俺達は合意の上の恋人同士だし それなのに…高野さんに強引に… 高野さん…鬼だな… だが雪名は何故かホッとしたような顔をしている。 「あー今の声で我に帰りました。 俺達、ゴムするの忘れてましたよね?」 雪名に言われて木佐もハッとする。 強烈な口づけプラス自然にお互いに触れ合っていたせいで、雪名も木佐も臨戦態勢だ。 いつセックスに雪崩込んでもおかしくない。 その時、ふと見た湯船の塀の上に籠が置いてあることに、木佐が気付いた。 「何だろ、これ?」 木佐が立ち上がって籠を覗くと雪名も立ち上がった。 籠の中には沢山の正方形の色とりどりの小さな袋と、ローションが三本入っている。 「木佐さん、これゴムっすよ! 超薄…各種イボイボ…!?大中小!? あ、ローションも薔薇・ストロベリー・グレープって書いてある! 香り付きってことっすかねえ!?」 「ふ~ん」 流石、超高級ハッテン場だな… 致せり尽せりじゃねーか… こうなったら!! 「雪名」 木佐が雪名ににっこり笑いかける。 「どれ使いたい?」 雪名はカーッと赤くなると、キラキラモードそのままにニコニコ笑って籠の中身を物色するのだった。 桐嶋の素足が大浴場の入り口でビクッと止まる。 「ああんっ…出ちゃう…アアッ…やーッ…」 という声が浴場から聞こえてきたからだ。 桐嶋が振り返る。 後ろにいる横澤は、腰に巻いたタオルの巻き方に納得がいかないようで、下を向いてタオルをいじっている。 良かった…横澤には聞こえてないみたいだな 桐嶋は安堵の息を吐く。 それにしても… 俺達二人だけじゃなかったのか!? 桐嶋の目には、手前の湯で不自然に離れて湯に浸かっている高野と小野寺、奥の湯で尻丸出しで立ち上がって何かを見ている木佐と雪名、桐嶋の所からは丁度死角になっていて良く見えないが、洗い場で誰かを支えているような羽鳥の上半身が映っていた。

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