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第46話
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(ほんまに悪いこと、お願いしてしもうた……)
敷き布団の上で胡座をかいて座る航平がもう一度、後ろ頭を掻く。笹木が航平の願いごとを断るわけがない。いつだって彼は航平の言うことを優しく聞いてくれたのだ。
(マジでガキじゃ、俺)
うーん、とその場でひとつ伸びをすると両腕を上げたままでばたんと敷き布団に大の字に寝ころんだ。見馴れない天井の模様の一点をきつく睨みつけてみる。
航平が今回東京に来た理由。
もちろん、二年前に行きたかった大学のキャンパスを見てみたいという好奇心はあったが、優先順位はとても低い。
それよりも、笹木の語ることでしか分からない兄の最期の数年間を、実際に兄が暮らした街の空気を通して体感したいという想いと、そして……。
(やっぱり俺が笹木さんのことを好きじゃと言うたら、笹木さんには迷惑じゃろうか……)
そうでなくても十七も歳が離れているのだ。笹木と話すと時おり、その口調は中学生のころの自分に向けた言い回しだと感じてしまうこともある。そう、いまだに子供扱いされているような。
(笹木さんは兄ちゃんとも九つも離れとったしな)
一体、兄とはどんな風に会話をしていたのだろう。笹木も純也には甘えたり弱音を吐いたりしていたのだろうか?
(恋人になるって、どんな感じなんじゃろ?)
そして、自分の笹木に対するこの想いは果たして恋心なのだろうか?
航平は自分の気持ちに自信が持てなくて、笹木に無理を言って彼の家にまで泊めさせてもらったのだ。
(できれば、寝るんも同じ部屋が良かったけれど……)
そんな下心にみるみる耳朶が赤くなった。
(馬鹿か俺は。もともとこの想いが恋なんかも分からんけえ、確かめよう思うてここまで来たんじゃろうが――)
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