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第67話

「ラン子ママが好きそうなタイプだね。ひとり?」  少し高い声色はともすれば少年のようだ。きっと自分よりも年上だろうに、航平は男の艶めいた表情とその声のギャップに戸惑ってしまう。 「……いえ、知り合いに連れてきてもろうて……」 「ふぅん、知り合いねぇ。で、その知り合いはどこに行った? もしかして置いてけぼりかな?」  男はジーンズの後ろポケットから煙草を取り出すと、カチリとライターで火を点した。ひとつ吸い込んでフッと吐き出したが、流れてきた煙はなんとも不快で航平はますます気持ちが悪くなる。 (初対面の人に対してこんな気持ちになったんは初めてじゃ) 「……ちょっと仕事の電話が入って、店から出とるだけです」  若い男は航平の答えに細い眉を片方上げると「ああ、なるほどねえ」と納得したような返事をした。 「俺の名前はリョウ。お前は?」  いきなり「お前」呼ばわりされて航平は少し苛ついた。そうでなくても声をかけられてから、この男の目線は不躾に航平を値踏みするように肌の上を這っているのだ。それでも「航平……」と囁くように自分の名前を告げた。 「コーヘーか。見たところ田舎から出てきた学生って感じだな」  何がおかしいのか、リョウと名乗った男はくつくつとにやけた笑いを繰り返して、まだ半分しか吸っていない煙草を揉み消した。 「なぁコーヘー。ここがどんな店か知っていて、そいつと一緒に来たんだろ? ちょっと安くしとくからさ、今からここを脱け出して俺とイイコトしない?」  リョウの生白い手がヌルリと肩に這わされる。触られた箇所にぞわりと何かが蠢くようで、航平は思わずその手を振り払うように肩を引いた。 「なに言うとるん?」  それでもリョウはニヤニヤと笑いながら航平の肩にしなだれかかってくると、 「だからさ、ちょっとお前を味見してみたいんだよね。別にラブホじゃなくても良いよ。近くに行きつけのサウナがあるからさ。お前の股の(あいだ)のデカそうなの、しゃぶらせてよ」

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