70 / 125
第70話
「どうせコイツらの話じゃさ、ジュンヤのキレイなところしかお前に教えないんだ。俺なら本当のジュンヤを教えてやれるぜ。あいつはさ、かなりのスキモノだったよ。客もイカれた奴らが多くてさ。縛りどころかローソク、ムチにスカトロ、殺されなければ何でもオッケーなんだ。仲間の客だって平気で寝取るし、ヤバいクスリをキメていたって噂もあったのさ」
やめなさい、とラン子ママがまた声を荒らげる。
「リョウ、航平くんが何も知らないからって嘘を吹き込まないで」
「嘘なもんか。お前をここに連れてきた智秋だって元は俺の客だったんだ。それをさ、あいつは横からシャシャリ出て自分の常連にしやがった。まぁ、あれは俺も智秋がネコだったなんて知らなかったから、ジュンヤにまんまとしてやられたんだけどな」
(ネコ?)
航平は笹木が純也の前に買ったボーイが目の前のリョウであることに気がついた。
「智秋もあんな大人しそうな顔をして、どんなプレイがお好みなんだか。すっかりジュンヤに入れ込んで恋人気取りでいたようだけど、俺達はそんなのフェイクだからな。ジュンヤには智秋以外にも何人もパトロンがいたんだぜ」
黙ったままでリョウを見つめる航平の動揺が解ったのだろうか。リョウはさらに航平に向かって衝撃的な言葉を吐いた。
「それにお前、怖くねえの? ジュンヤを殺したかもしれない奴と仲良くするなんて」
(――兄ちゃんを殺した……?)
「リョウ! 本当にやめなさい!」
ラン子ママの声に店内が一気に凍りつく。薄暗がりから無数の視線が自分の背中に刺さるのが嫌でも判ってしまう。
ともだちにシェアしよう!