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第73話
「なのになんでジュンヤの弟なんか連れて歩いてんの? それもジュンヤと居たときみたいに愉しそうに笑ってさあ? こいつじゃ、どうしたってジュンヤの代わりにはならないだろ? それとも、こいつがあんたを満足させてくれるから俺は用済みだったってか?」
リョウの詰問を黙って聞いていた笹木は、航平を背中に隠すように一歩、前に進み出ると、
「別に彼を純也の代わりにしてはいない。それに前にも言ったけれど君とは……」
「はあっ? ふざけんなよ! あんた、俺に突っ込みながらジュンヤ、ジュンヤって泣いてたじゃねえかッ!」
目の前の笹木の肩が小さく震えた。きっと今、リョウの言ったことは本当のことなのだろう。航平は強く拳を握り締める。そうでもしないと、胸を染め始めたリョウに対する暗い感情が吹き出しそうだからだ。
「なに言ってるの。それはあんたが弱っている笹木さんに付け込んだんでしょう!?」
ラン子ママの指摘に今度はリョウがグッと息を詰めた。
「さっきからジュンヤに寝取られただの、身代わりにされただの言ってるけれどね。元々、あんたのほうが節操が無いからリピート客がつかなかったんでしょう? それにワタシ知っているのよ。あんたがこんなに笹木さんに執着するのは笹木さんのことが、」
「……っ、ウルセエ、このカマ野郎ッ!! 黙れ!」
「なんだと!? このガキ、言わせておけばいい気になりやがって!」
タクミがまたラン子ママとリョウの間に割り込んだ。急にラン子ママから発せられたドスの効いた怒鳴り声に航平はびっくりした。
なんとかタクミが場を取り成して、ラン子ママは自分を落ち着かせようと大きく深呼吸をした。その緊張した空間に笹木の声が流れてくる。
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