97 / 125

第97話※

 途端に航平は口を開いて湿った舌を出すと笹木の唇を舐めまわす。先ほどまでのぎこちなかったキスは急に上達したようだ。薄く開いた唇から口の中へと割り込んでくると、まるで構造を確認するように丹念に歯列をなぞり、舌を絡めとられた。  大きな水音が耳に届く。興奮が抑えきれないのか、航平は何度も顔の角度を変えると笹木の口腔を貪った。唇の端からふたりの唾液が混ざって溢れ出しても、それも航平は啜り取ると喉を鳴らして飲み込んだ。 「……ふっ、んン……」  息苦しくて声を漏らした笹木を航平は腕を引いて抱き寄せる。後ろ髪に指を差し込まれ、大きな手で頭を押さえつけられても、笹木は粗い息を繰り返しながら航平のキスに応じた。  どれくらいの時間が経ったのか、やっと航平は笹木の唇を解放すると今度は濡れたままの口を笹木の顎の下へと這わせてきた。片腕で笹木を抱えたまま、もう片方の手で笹木のパジャマのボタンを外そうと悪戦苦闘している。このままではボタンを飛ばされそうで、笹木はやんわりと、 「ちょっと待って。自分で脱ぐから」  熱に浮かされて小さく肩で息をする航平から逃れると、笹木は薄明かりの下でパジャマのボタンを外した。前をはだけたまま、初めて見せる素肌に航平の視線が這うのがわかる。晒した胸に朱が差したのか、じわりと汗ばんだような気がした。  笹木は目の前の航平の姿を目に映す。広い肩から二の腕に向かう筋肉を覆った肌は小さな灯りの下でも張りのある光沢を放っている。呼吸をするたびに動く厚い胸板もその下の割れた腹筋も初めて笹木が目にするものだ。同じ両親から受け継いだ遺伝子でも、こうも兄と弟で違いがでるのかと思わず純也の裸体と比較をしてしまった。

ともだちにシェアしよう!