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第6話

◆  仕事終わりにエプロンをはずしながら、思わず鼻唄が出た。今日はこの後、奥寺と飲みにいく予定なのだ。浮かれすぎに気付いて慌てて鼻唄は止めたが、手遅れだったらしい。聞きつけたオーナー兼店長の下元が、興味津々といった顔で尊の顔を覗いてくる。 「なんだ、浮かれてんな、デートか?」 「あー、いや、まあ」  なんとなく答えを濁すが下元はしつこかった。別に奥寺と飲みにいくことは秘密でもなんでもないのだから正直に言えばいいのだが、なんとなく秘密にしておきたかったのだけれど、通りかかった奥寺がさっくりと解決してしまう。 「ああ、飲みにいくんだ」 「飲みに? お前と尊が?」 「そうだ」  下元は奥寺と尊の顔を見比べて、納得できないような表情で首を傾げている。 「いつのまにそんな仲良し?」 「同僚なんだから別にいいだろう。尊君、着替えるからもう少し待ってくれるか」 「あ、はい」  優しい目が眼鏡の奥で微笑むのを見ていると、尊も顔がへにゃっと緩みそうになる。そんな二人をもう一度見比べてから、下元が恨めしそうに奥寺を睨んだ。 「なんだよ、俺も誘えよ」  下元にそう言われたら奥寺は断らないだろうなと思っていたから、なんとなく秘密にしておきたかったのだけれど。  ――店長も一緒かあ。  落胆しながら肩を落とす尊だったが、意外にも奥寺はその申し出を一蹴する。 「駄目だ、今日は尊君といく約束なんだ」 「……分かったよ。けど、今度は誘えよ。だいたいお前いつも一人でいくくせにさあ」

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