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第7話

「え、あ、はい、なんとか」 「そうか良かった。昨日は無理をさせたんじゃないかと心配した。これ、見舞い」 「あ、すみません、ありがとう、ございます」  なぜ、奥寺がここにいるのかまだよく分からないでいる尊に、奥寺は真剣な目のままでそっと口を開く。 「昨夜のことなんだが、俺なりによく考えてみた」 「昨夜のことって――」 「君に好きだと言われて悪い気がする人はいないだろう。でも、俺にはその、応えられない」  これはつまり、今、振られているのだ。ぼやけた頭でようやくそのことに気付いて尊は慌てて笑ってみせる。 「あー、大丈夫、気にしないでくださいよ。そんなこと分かってるって」 「誤解しないで欲しいんだけど、君は魅力的で良い青年だと思っているよ。応えられないのは俺の問題だから」  ホモを振るときにまで奥寺さんは優しいんだなあ、と変に感心しながら尊は何度も頷いて見せる。これで奥寺の気がすむならそれでいい。 「奥寺さん、分かってるから。気にしないでくださいね。気を使わせて逆にすみません」 「いや、そんなことはない。君みたいな子に好きだと言われて、その、嬉しかったのは事実なんだ」 「うん、ありがと。でも、もう寝たいから、今日は帰って」 「ああ、そうだな、無理をしないように。お大事に」  じゃあ、また店で、と手を上げる奥寺を見送ってから部屋に入ると、足の力が抜けたようにずるずると廊下に倒れ込む。わざわざそのことを言いにくるなど、律儀で真面目な奥寺らしいなと愛おしく感じてしまう尊は、まだこの恋を仕舞いこめないことに気付いてしまったからだ。

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