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第9話

「お邪魔します」  丁寧な挨拶をくれる奥寺を、まだしまっていないコタツの前に座らせて、尊はお茶でも沸かすつもりだったのだが、奥寺に促されて、隣に腰を下ろした。 「何ですか?」 「少し、側にいてくれるか」 「やっぱ、怪我、大変なんじゃ……」 「違うけど、ああ、でも、少しは心細かったのかもしれないな。君がいると落ち着く」  そんな嬉しいことを言われて離れられるはずもない。おとなしく奥寺の隣に座って、そっと奥寺の手を覗く。包帯で巻かれた左手は痛々しくて、尊を責め立てる。 「本当に、すみません。本来なら俺のケツに刺さっているはずのガラスだったのに」 「本来なら、かっこよく君を抱きとめて、あの彼氏に説教をしてやるはずだったんだけどな」  奥寺がぼやくようにそう言うのには顔を見合わせて少し笑った。こんな怪我をしたというのにどういうわけなのか、なんだか奥寺は、いつもより機嫌がよくてよく笑う。それにつられるように、尊も罪悪感が薄れていくようだった。 「そろそろ、メシにします? コンビニ弁当温めるだけだけど」 「何か作ろうか?」 「何言ってんですか。あー、なんか食いたいものありました? 今作れるものって、鯛茶漬けくらいだけど」  冷蔵庫には昨日買った刺身がある。前に奥寺が教えてくれてから、こっそり何度も作ってみているのだが、やはり奥寺の味にはならなかった。それでも奥寺に触れているようで、つい、作ってしまうのだ。

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