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第5話
週明けの月曜日。
気まずさと緊張でドキドキしながら出社すると、部署の入り口でいきなり海音 と顔を合わせてしまった。
『あ..///
お、おっはよ~っ!』
『おはよ…』
頑張って普段どおりに声を掛けたけど、海音 はこっちも見ずにそう答えるとすうっと俺の横を通り過ぎてっちゃった。
ガーーーンッ…
..やっぱりそーいう反応だよね?
俺、海音 を傷付けちゃったよね?
どうしよどうしよ…
2人の間に流れる気まずい空気をどうにかしたくても気ばかり焦ってどうにもならない。
振り向きもせず歩いて行く海音 の背中をぼんやりと見ながらも何も言うことが出来なかった。
『白井幸之助〜っ!』
終業時間が近付いた頃、金森課長の怒号が飛ぶ。
『はい?何でしょうか課長。』
『何でしょうか、じゃないでしょ。
今日期限の書類は?』
書類…?そういえば…
でもそれどころじゃなかったし。
『あ。すっかり忘れてました。』
しれっとそう答えると、次の瞬間怒りで真っ赤になった金森課長の叫び声が社内中に響き渡った。
『こっ、こっ…幸之助〜〜〜っ!!!』
キーン
耳痛てぇ…課長、まだそんなデカイ声出せたんすね。
金森課長は華奢で透き通るように色が白くて黙っていれば女性と見間違うほどの美貌の持ち主。
ちょっと天然なのがたまにキズだけど怒った顔もめっちゃ綺麗だよなぁ…。
でも、課長には悪いけど俺ほんと書類がどうとかそんな事考えてる場合じゃないんで。
..なーんて言い訳が通るわけもなく居残り決定。
いつもなら海音 が手伝ってくれるのにやっぱり今日はいつのまにか帰ってしまってて…誰もいなくなったオフィスで一人、黙々と書類を片付けていく。
ふとペンを走らせる手を止めて、いつもの海音 とのやり取りを思い出す。
「コウ先輩遅いっ。
ほらそっちの書類も貸せよ」
「また残されてんの?
しょうがねぇな…」
「飯奢ってよ
それでチャラにしてやる」
面倒くさい残業も海音 と一緒なら楽しかった。
ブツブツ文句言いながらも俺に付き合ってくれて。
俺をからかって時折見せる無邪気な笑顔が可愛かった。
…もう一緒にいられないのかな?
俺は…いつだってお前と一緒にいたいのに。
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