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第12話
『ねねたんただいま〜…』
1日の仕事を終えて自分の部屋へ戻るとベッドの上のクマのぬいぐるみに抱き付いてそのまま倒れ込む。
俺はけっこう可愛いモノ好きで、特にこの特大ぬいぐるみのねねたんは昔からのお気に入りで独り暮らしを始める時にこの子だけは実家から連れて来た。
殺伐とした日常から俺を癒してくれるのはこのねねたんと…今は大好きなコウ先輩だ。
それにしても今日はいい日だった…
朝からエレベーターでコウ先輩と密着出来た上に仕事帰りにご飯にも行けたし…。
残業を手伝ってくれた御礼にってイタリアンをご馳走してくれたコウ先輩。
俺がトイレに行ってる間に支払いは済ませてあるし、電車とかもいつも俺を優先してくれるしさ…
スマートでマジカッコいいんだよな…♡
本人はモテない残念男だと思ってるみたいだけど、俺がいつもくっ付いてるのもあるし、みんな牽制し合って告白とかしないだけで狙ってる女はたくさんいるんだ。
今朝だって…
エレベーターを降りる時にわざとらしくよろけたフリしてコウ先輩に抱き付いた女がいた。
『キャッ…すみませーん』
『わっ、大丈夫?』
咄嗟に受け止めるコウ先輩。
『やだ…どうしましょう…
ファンデーションが上着に…』
『…ああ、これくらいすぐ落ちるから。』
『でも…』
『大丈夫!気にしないで!』
さらりと交わして歩き出したコウ先輩の後ろ姿を名残惜しそうに見ていたあの女…秘書課の何とかいうヤツだな…気に入らねぇ。
ブラウスの胸元をギリギリまで開けやがって汚ねぇブラがチラチラ見えてんだよ!
ちょっと巨乳だからってゴリゴリにアピールしやがって…
残念だったな…コウ先輩はお前みたいに恥じらいのないゲス女に引っ掛かるような馬鹿じゃねえんだっつの!
『海音…今の…』
『何?コウ先輩?』
『…巨乳だったな…』
『あ。』
だあぁぁぁーっ!もう!
コロリと引っ掛かってんじゃねえか…チックショー!!!
あの女…許さん。
俺の殺すリストに名前を追加だ。
またイライラが込み上げてきて、ボスっとねねたんの腹に顔を埋める。
…コウ先輩はやっぱり女の子だけが恋愛対象なんだろな…
俺なんて全然アウトオブ眼中。
ましてや俺が自分の事をこんなに好きだなんて思ってもいないんだろう。
側にいる為に自分の気持ちをひたすら隠してきた。
恋人になれなくても、このまま仲のいい先輩後輩でいられたらそれでいいと…
ずっと自分に言い聞かせてきた。
だけど…コウ先輩が誰か他の女のモノになるのを見るのは絶対に嫌だ。
深く溜め息を吐いて堂々巡りのネガティブな感情を飲み込んだ。
それでも好きな気持ちは止められない事くらい自分が一番良く分かってる。
『コウ先輩…今日もカッコ良かったなぁ…』
目を閉じて優しいコウ先輩の顔を脳裏に思い浮かべる。
" 海音、社食で昼飯食おうぜ "
コウ先輩はスキンシップも多くていつもそんな風に気楽に俺の肩を抱く。
その度に俺の身体はコウ先輩が触れたところから熱を帯びて甘く疼き出し、行き場のない想いに身を焦がす。
…今は彼女とかいなくても、そのうちコウ先輩が誰か女を抱く日が来るんだろうか…?
あの細くて長い指で…女の柔らかい肌に触れるんだろうか?
『ふっ…ん、コウ先輩…』
ズボンのファスナーを下ろして下着に自分の手を滑り込ませる。
少し勃ち上がりかけた自分のモノを軽く握るとそのまま小刻みに上下する。
少しずつ快感が増すにつれて先端から先走りが漏れヌルヌルとした感触にブルリと背中を震わせる。
『はあっ…、せんぱ…んんっ…抱いて…
俺のこと…愛してっ…』
叶わぬ想いを口にしながらゆっくりと自分を慰める。
敏感な窪みに左手の指を食い込ませて擦りながら今度は右手で自分の後孔に指を差し込んでいく。
『あっ…ふぅ、んっ…ぅふっ…』
ぐちゅぐちゅと粘膜の擦れる濡れた音が静かな部屋に響いている。
三本目の指を受け入れ自分の中を思い切り掻き回してみても快感はあるものの絶頂を迎えるには足りなくて…
もっともっと奥まで抉 られたいのに自分では届かなくてもどかしさに叫び出しそうになってしまう。
『ふぅぅっ…コウ先輩…先輩の…欲しいよぉっ…コウ先輩っ…』
何度も愛しい人の名前を呼ぶけれど答えは返ってこない。
胸が苦しい
コウ先輩が好きだ
どうしようもないくらいコウ先輩が好きだ
奥まで届かないこの指のように
俺の気持ちもあの人には届かない
優しい腕に抱かれたい
熱い唇で口付けられたい
低くて甘い声で俺の名前を呼んで欲しい
愛してるよって…
俺の大好きな眩しい笑顔でそう言って欲しい
『好きっ…好きだよ…あ、はっ…コウ先輩…ふぅっ…大好き…』
コウ先輩の笑顔を思い浮かべながら両手の動きを早めていく
イキたい…
コウ先輩の熱く滾ったモノでこの身体を貫いて欲しい
『ン、あっ、アアッ…出、るっ…イクッ…ふっ、ァア…』
ドクン、と自分自身が脈打つと同時に快感が全身を震わせて俺は自分の手の中に浅ましい欲望を吐き出した。
はぁはぁと荒い呼吸を繰り返しながらポトリと涙が一筋、頬を伝う。
自慰行為の後はいつも、コウ先輩を汚してしまった様な気持ちになって虚しさとやり切れない悲しさで涙が出てしまうんだ。
ティッシュで手を拭き取り、シャワーを浴びようとベッドから起き上がると、その反動でねねたんがこっちに倒れて来てまるで慰める様に俺の肩に凭 れ掛かった。
『ねねたん…慰めてくれてるの?』
返事のない相手をぎゅっと抱きしめる。
『辛いなぁ…。
好きでいる事がこんなに辛いなんて思ってなかったよ…。』
今までだって恋はしてきたけれど、こんなにも胸が苦しいほどに人を愛した事は無かったから…
コウ先輩を好きな気持ちが増えれば増えるほど、同じくらい胸の痛みも増えてどうしていいのかわからなくなっていく。
後輩として何でもない様に接するのももうそろそろ限界かなぁ…
神様…
もし願いが叶うなら俺を柔らかくて可愛い女の子にして下さい
他には何も要らない
あの人の心だけ…俺に下さい
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