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いつになれば
「はぁ。…っ」
考え事をしていたせいか、朝食セットがテーブルの上に置かれてあったことに全く気がつかなかった。
白くて丸い皿の上に卵サンドウィッチが二つ。別皿にサラダが盛られてあり、その隣にはホットコーヒーが入った白いコップが置かれてあった。
「もう三年も経つのか…。橘さん…」
そう思いながら、サンドウィッチを一口。
始めのうちは、自分が生きていくためのお金を稼ぐためだった。でも、いつしか橘さんに会うために、有名にならなければ。という気持ちに変わっていた。
それなのに、あの日からずっと待ち続けているのに、まだ橘さんの姿は現れていない。たまに、橘さんに似ている人が前を通る時があるが、その度に「僕のことは、もう忘れているのだろうか」と考え込んでしまう。
「まだ、足りないのかな…」
朝のカフェは、スーツを着た男女がちらほらと現れ、その姿は見るからに焦っている感じである。きっと、電車に間に合わないのだろうか。そんな、姿を横目で見ながら、僕はセットにあるサラダに手を伸ばした。
今までの経験から、待ち人について分かったことがある。
それは、平日は昼間より夜間の方が客が多い。やはり、仕事や学校があるからだろう。だから、その間はネットカフェやたまに行くバーに行くのである。バーの店長には、酔った勢いで口を滑らせてしまい、僕が待ち人をやっていることは知っている。犯罪だと店長も知っているが、「後悔はしないように」と優しく言ってくれている。
「…行こっかな」
今の僕には、話を聞いてくれる存在が必要だと思う。
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