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ル・ドルンにて

 カフェの駐車場には、平日の昼間にしては多いと思うほどの車があった。  無事に店から少し離れた場所に車を止めることが出来、エンジンを切り「よし、行くか」と、店長はドアを開けようとするが、いざとなると勇気が出ず、うつむく僕に気づき「まだ時間はあるし、もうちょいいるか」その言葉に僕はうなづき、店長がかけ直したエンジンにより、途中になっていたジャズが車内に流れ出す。  現在時刻は、午後一時三十分。まだ待ち合わせ時刻には少し早いが、ここに居ると勇気が出なく本当に行けなくなる気がした。  僕は深呼吸をし、「行くよ」  それに対して、「了解っ」そして、エンジンを切る。  車を出ると、車内と車外での温暖差で少し立ちくらみをする。  そのまま店へと向かう。店内に入ると、そこには八割以上の女性が大勢いた。初めて入ってみたが、ここに男二人で溶けこめる勇気は、僕にはきっとない。 「女ばっかだな」と、身長が低い僕の耳に口を近づけるために中腰になり、小声で僕に言う。「うん。勇気が出ないや」と、そのまま小声で言う。  僕らが入り口でコソコソと話していると、「すみませんっ、お待たせしました。何名様ですか?」と、黒髪で身長が僕より少し高い男性が小走りでやって来た。 「二人です。後で、もう一人来るんですけど」店長が答えると、「分かりました。では、お席へご案内します。こちらへどうぞ」と、男性について行く。  席へと向かう間に店内を見回していると、テレビで言ってた通りに、店員が全員イケメン男子である。キッチンはガラス張りで、席に座っていても調理風景が見れるようになっていて、頭にバンダナをした若めの男性は、時々ガラスの向こうのお客さんに笑顔を振りまいていた。 「ここは、カフェという看板のホストクラブだな」と我ながら実感をした。 「こちらにどうぞ」と、案内された席に座り、「後で、お冷をお持ちいたしますので、少々お待ちください。ご注文決まり次第、フロアスタッフをお呼び下さい」そう言い、笑顔を残し去ってった。 「なんかここってホストみたいだな」と、メニューを見つつ笑った。「それ僕も思った。まぁ、それも一つの売りなんだろうけどね」 「おぉ、結構メニュー多いなぁ」と、メニューを見せてくれた。メニューが書かれているのは、本のようになっており、写真があったり手書きのようなコメントも書かれてあり、メニューを見るだけで、一時間は経つ気がする。 「失礼します。お冷になります。ご注文は決まりましたか?」がたいが大きく、目がキリッとした人が二つのお冷を持ってきた。 「そんじゃ、…アイスコーヒーで」 「…僕は、ウーロン茶で」 「分かりました。アイスコーヒーとウーロン茶ですね。…失礼しました」メモを取り、少し頭を下げ、席を去った。  それから、店の雰囲気や店員さんの話をしていると、「失礼します。ウーロン茶とアイスコーヒーになります」僕たちを始めにこの席に案内してくれた方が、やって来た。  僕たちは、それぞれ礼を言い、話の続きを話した。一口飲んだウーロン茶は、お世辞ではなく、今まで飲んだウーロン茶の中で一番美味しかった。  話している間にも、刻一刻と時間は過ぎ、心臓の高まりは止むことを知らない。  この高まりが、美月さんに会いたい気持ちなのか。僕を騙すためにやって来た、日向さんに会うのが怖いのか。どっちなのかは分からないが、だんだんと店長の話が頭に入ってこなくなっていくのは分かった。 「…緊張してんな」 「…うん」 「心配すんじゃねぇよ。俺が付いてんだからな。ま、途中で帰るけどよ」 「えっ、店長帰っちゃうの?。何で」 「何でって、俺がいたら話してぇことも話せねぇだろ。無理そうだったら残るし、心配すんな」  その言葉を聞き、安心したと自分言い聞かせた。  そして、その時はやって来た。

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