3 / 27

【見夏編】第3話

* * * 「………んっ……、だめ、………もっと強くしてっ……」 「だって、先生こうやって優しく焦らしてあげた方が感じやすいでしょ?」 「……ち……がう、……ちがうから…ぁ……………早く」 「先生の身体、知り尽くしてるのは俺だけだよ」 擦る力が強くなるにつれ、ガクガクと腰が揺れ、自分でも高いと思うくらいの声を漏らす。 ──早くイきなよ。 そう言われてる気がして、俺は北城の手の内で精を吐いた。 昨日もしたせいで精液はサラサラで、北城はぺろっとそれを舐めて、にやっと俺に向かって微笑む。 「ほらね」 これじゃあどちらが教師なのか分からない。 こうやって夜俺の部屋で抱き合うことで、俺は償われている。 形で表された償いは、俺の中で膨れ上がって割れるみたいに、すぐに果ててまた欲しがってしまうもの。 嫌悪感が無いならそれでもいいと思った。 お互いがそれで保てているならば、償いにはなってる……きっと。 そうでないならば、狂ってしまいそうで……怖い。 「ゴム持ってきてないや……生でいい?」 「……ゆびっ!ゆび………突っ込みながら………言うなっ………!!」 「んー……まあさっきローション使ったし、ちょっと痛いくらいなんだけど」 「………はなし、………きけっ……………っ、あっ……!」 問答無用で北城は俺の中に突っ込んで、ゆらゆらと腰を揺らしていく。 見た目とそぐわない巨根は熱で身体をどろどろにするには十分で、何もかもを忘れさせてくれるくらい、好き。 北城は無理矢理が多いから、最初は戸惑った。 けどその横暴さで救われたことも確かなことだった。 体温の高さで、じんわりと汗が浮かぶ。 入り口と近いようで近くない場所を、彼の先端で激しく擦られるほど、ぐちゃぐちゃになって敏感になっていく。 生理的反応で腰が大きく反り返る。 そのたびに北城はどこか満足げに微笑んで、確かめるように口を大きく割るように、深い深いキスを落とすのだ。 「………んっ………んんっ…!!ぁあ……………………っ……」 じゅっ、と唾液を吸われたような音が響き、ぎゅっと胸を掴まれるような感覚に陥る。 「ねぇ先生、やっぱりキス好きでしょ??そうだよね?? さっきよりぱんぱんに勃起してるよ??」 「………っ………やら…ぁ………………はげしっ………」 自分から激しくしてくれって望んだくせに。 北城はキスはたくさんするのに、キスマークは1つもつけない。 それが関係の薄さを改めて示しているようで、どこか切ない。 学校で会えば先生生徒の癖に、どうしてか夜の印象が強い。 なんでだろう……? 「………っ、くっ…………せんせ、出すよ??」 「………─────うん、……うん…………お願い……………………」 北城の精液が俺の中をいっぱいに満たしたあと、目の前がチカチカして、そのまま眠りに落ちていく。 気持ちよくてふわふわ、激しくした後にはこうやってすぐに眠ってしまう。 眠ったのではなく意識を飛ばしたのは分かっているけれど、いつもこうなってしまうから、彼は睡眠導入剤だ。 なあ北城。 俺はおまえとの行為は、好きだよ。 そこに愛がなくても。 なあ北城。 お前は……どう思ってる………?? * * * 昔もこんな風にめちゃくちゃになって、意識を飛ばして、訳がわからなくなるくらいおかしくなった。 でも北城とのこれとあれでは違う、人が違うというのもあれば、感覚だって違う。 まるで神様が引き合わせたような偶然の相性。 ──…同じ血が通ってるのには、信じられないくらいぞっとするが。 「先生、大丈夫?」 「……北城…?」 ──…ああ、俺、いつのまにか目覚めてたんだ。 目覚めると、夢を見る前の自分を思い出して、ひたすらに壊れるような虚しさが残った。この関係が、いつまで続くのだろう。 バレることもなければ、俺のトラウマだって拭えず、ずるずるこうやって引き摺ってる。 関係も、セックスも……それ以外も。 北城は何を望んでいるのだろう。 俺とセックスをして、俺と仲良くして……何も得をすることはない。 償いの為にしていることは分かってるつもりだけど、それは自己満足であって、一方的な思いだとしたら俺は……。 やはり、死んでもいいのではないだろうか。 「先生、暗い顔してる」 「……くすぐったい」 「あはは。……ごめんね? ……でも笑って欲しいな、お願い」 ふと北城が悲しげな声をぽろっと漏らし、流れで俺は笑う。 今まで聞いたことの無い消極的で、心配になりそうな雰囲気を含む。 笑うと北城も笑って俺を抱き締める、それはまるで俺に甘える子供のようで、ちょっとかわいい。 「うん。やっぱり先生は笑った方がいい」 「……お世辞でも、ありがとう」 「お世辞じゃないよ。 だって先生の笑った顔かわいいもん」 「嘘つき……北城変わってる」 他愛の無い会話を幾度も繰り返すうちに、いつの間にか朝になってるのはいつものこと。 今日の朝は土曜日で俺も北城も休みだから、ゆっくり休めることができる上に、遊ぶことができる。 でも今週は珍しく北城の方から誘われた。

ともだちにシェアしよう!