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【見夏編】第16話
* * *
「……ということでアンクレットが戻ったと?」
「……はい」
千草先生は相馬先生を連れて中庭までやって来たが、どうやら怒っている様子だ。
物腰の柔らかい人が見せるもう1つの顔に、全員が唾を飲み込む。
無理もない……二度手間掛けた上にもうアンクレットはもう手元に戻っていたのだから。
「はぁ……最初から素直になっていれば良かったものの……」
「うっ……ちょっと今回はハンセイシテルカナー……」
「……まあいいでしょう」
秋斗は困惑していた様子だが、事情を説明すると納得が言ったようで、なるほどと呟く。
しかし旧校舎のことがバレたお陰か、すぐに顔が赤くなり、焦るようにそっぽ向く。
全員が秋斗と仁科の関係を知った状態だ。
「……そうだ。俺は逞と付き合ってる」
「あの……黙っててくれませんか?俺たちのこと……」
黙るも何も、千草先生と夕陽も付き合ってるし、俺なんか北城とセフレだ、一番バレて困るのは俺の方だ。
夕陽もいっそのことカミングアウトしようと思ったのか、千草先生の肩に寄りかかる。
──こう見れば千草先生と夕陽もお似合いかも……。
「何言ってんの?俺たち仲間じゃん。
バラさないよ」
「え……夕陽くん……千草先生と……!?」
「……俺たちもお似合いでしょ?」
「うんっ……!ありがとう……!」
千草先生は溜め息を吐きながら夕陽を見つめるも、その瞳はどこか吹っ切れていて、今まで言い出せなかったもどかしさを感じさせる。
もし二人で接することがあれば、ノロケ話をたくさん聞いてあげよう。
「そういえば、北城くんにお礼を言わなくてはいけませんね」
「そうですね。そのおかげで仲直りできたので……あ、俺言っておきます」
「待って、俺も言いたい」
「じゃあ明日、百田くん連れて保健室に行くね」
──北城。
俺も言いたい……。
言いたいことがあるんだ。
──『好きなひとはいますか』?
まだチャンスがあるのなら、俺に譲ってほしい。
償いじゃなくてちゃんと向き合いたい、優しさや寂しさを知っているから、俺がもっと優しくしてあげたい。
そう思う俺がわがままなことは知ってるけど、わがままでいい……。
もう、俺はきっとこの恋にどっぷり浸かる準備は、出来てるのだから。
「俺、北城と友達になれるかな?」
「大丈夫だよ。
確かに見た目は派手だけど、根はいい人だから」
「そっか。
逞がそう言うなら信じる」
それにしても北城と仁科はどうやって知り合ったのだろう……確か同じ中学校ではなかったはず。
クラスも仁科は特進科、北城はファッションデザイン科と大きく違う。
けど確かに優しさを見れば、北城は色々な人から好かれるタイプなのかもしれない。
そう思うと、俺は意外と北城のことを見てないのかもしれない。
「見夏先生」
千草先生が微笑みながらこう誘う。
「よろしければ、夜飲みません?」
後ろの秋斗も賛成の様子で俺を伺っている。
……こりゃ飲まされるな。
すでに仁科と夕陽は帰るために教室に向かっていて、今日は生憎これといってする業務は無い。
それにこの二人なら遠慮なく話せる気がして。
「じゃあ、行きましょう」
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