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【デート編】第23話

* * * 【仁科サイド】 「百田って絶対見夏先生のこと好きだよね」 「え」 月曜日の昼休みのこと。 友達である百田くんを連れて、夕陽くんと一緒に話していると、ふと夕陽くんがこんなことを言う。 百田くんと夕陽くんは案外すぐ仲良くなれて、ほっとしているのは千草先生も一緒。 友達がまた増えたのが嬉しそうで、本当に千草先生は、夕陽くんが好きなんだなと感じる。 「なんで分かるの?」 「見夏先生に過保護……?」 あ、それは俺も分かる気がする。 なんか俺以上に優しいというか、先生の前では楽しそうなんだよね。 ……それにしても、なんで千草先生にやにやしてるんだろう。 「付き合ってるの?」 「好きって言ったけど、向こうから好きと言われてないというか……雰囲気で付き合ってるみたいな?」 「は?だめじゃん」 夕陽くんと同意件。 これは付き合ってるというよりも、まるで一方通行な気がするんだよね……。 先生も先生でなんで言わなかったんだろう、これじゃあめちゃくちゃもどかしい! 「別の好きと勘違いされたのでは?」 千草先生が間を割るようにそう告げる。 「まさか。 抱き締めたしキスもしたし……」 「いやいやいや、展開が早すぎ。 相馬先生でも逞に最初そこまでしなかったのに」 「……一番手を出しそうなのに?」 ……俺の場合。 この中で最初に付き合いだしたけど、まだキスには慣れてないし、ハグだって俺が溶けてしまいそうになってあまりしていない。 それは性格のせいかもしれないけど、側にいるだけでも嬉しいから、必然的にそうなっているのかも。 「わかった」 夕陽くんが閃いたようににこっと笑う。 喧嘩以来毎日のように見ることができるようになったその表情が、友達一号として、最高に嬉しかった。 「意地でも恋人っぽい雰囲気にさせればいいじゃん。 先生と生徒っぽい感じは捨てて、もう本当にカップル的な環境に」 「あぁ……それなら必然的に見夏先生も意識するでしょうね」 「……俺にできるかなぁ…」 悩む羊のように項垂れる百田くんは、本当に珍しい姿である。 こんな風にさせることのできる見夏先生って一体……何者? 「相馬先生とか意外に恋愛テクニック知ってそうじゃない?」 「確かに、その雰囲気はありますね」 「相馬先生助けてぇ……」 項垂れる訳でもなくそのまま机に伏せた百田くんは、本当に悩んでそうである。 ずるずるこんな中途半端な関係を引きずるわけにはいかないし、早いところ俺も協力してあげたいな。 「デートとかはどうかな?」 俺がそう提案すると、百田くんはがばっと起き上がり、まさにそれだといわんばかりの表情を見せる。 「ほら、他の生徒に見つからないすごく遠くまで行くと、特別感が湧かない?」 「あ、分かる。 でも相手は大人だから場所が難しいかもね、たぶん……」 たぶんと夕陽くんが呟いたのは、きっと見夏先生の雰囲気で、行きたい場所を何となく理解できたんだろう。 見夏先生は大人というよりかは、まだ少年な感じのイメージがあるから、逆にそこが問題だけれども。 「まぁ、飲み会でもかわいくおにぎり頬張ってた感じでしたからね~」 「……千草先生、後でその話聞かせて」 「いくらでも話してあげますよ」 無難にいくならば遊園地? いや、ファミリー向けだから大型の方がいいかも。 でもきっと男友達みたいなノリになっちゃうかもしれないからきっと避けた方がいいかもしれない。 俺が今まで相馬先生とデートしたところはどこだっけ? 遊園地……映画館……デパート……海……水族館……ある意味定番ばっかり。 もっとこう……捻りがほしいというか……。 「ふふ。 では皆で事前にリサーチするのはどうでしょう?」 千草先生の提案に、全員が頷く。 リサーチってなんだか楽しそう。 夕陽くんも珍しくわくわくした感じになってる。 「この中で一番接しやすいのは俺と仁科くんですかね」 「でも逞だとボロが出そう……」 ……それは自分でもよく分かるかもしれない。 とりあえず百田くんから先生に聞いてみようということで、昼休みが終わる。 俺は明日の昼休みに聞きに行くというわけで、気持ちが高ぶったまま教室に戻った。 ……見夏先生とうまくいくといいな。 仲直りを後押ししてくれたおかげで、夕陽くんと仲直りできた。 百田くんには感謝してるし、見夏先生にも感謝してる。 ……これは俺からの、ささやかなプレゼント。

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