2 / 14
第2話
事の起こりは数日前だ。タキシラ王国は荒涼とした大地と砂漠、そして豊かなオアシスの国。
私はその国の第二王子として領地を任され、小さいながらもハーレムを持っていた。
領民は幸せそうな笑みを見せ、穏やかに、平和に時が流れていた。
はずだった……
隣国からの侵攻はあまりに突然の事だった。抵抗したが、どこからか宮殿に敵が侵入して陥落。私は妻達を逃がした後に少ない従者と兵を連れて逃げ出すより他になかった。
虚しいものだ。愛していると囁いていた妻達はこうなると誰一人側にいることはない。従者は次第に我が身可愛さに側を離れた。結局最後まで側にいたのは腹心の兵が一人だ。
そして私はその兵によって売られたのだ。
ガタリと急に馬車が止まり、不規則に首のロープが引っ張られる。倒れれば首が絞まっていくが、体を立て直すにも手が使えない。
「っ!」
息が苦しい。私はこのままここで死んでしまうのか。妻に見限られ、従者は離れ、腹心の部下に売られて……
朦朧とした意識の中、幌をあげた黒い影を見た。
――――っ!
声が、聞こえない。何を叫んでいるんだ? 頼む、息ができないんだ。このまま死にたくはないんだ……。
ともだちにシェアしよう!