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第5話
◇◇◇◇
「屍王様、このようなΩの白守子という身分にも関わらず……気高き王花様をたぶらかすこの者に―――どうか、厳しい罰を……」
「王様――――どうか、厳しい罰をお与えくださいませ」
夜桜の真上で王花様とやり取りをした際、どうやら王花様付きの護衛官から見られていたらしく、僕は―――今……この国の王である屍王の前へと跪つき彼の言葉をひたすら怯えながら待っていた。
―――護衛官が忌々しそうに眉を潜めながら屍王へと言及するのも、無理はない。
王花様は生まれついた時から当然のように気高きαで、いずれこの国全体を守っていく王となる立場の者で、生まれついた時から劣等種のΩでこれから一生意味のない人生を送る白守子の僕とは―――天と地の存在なのだから。
「―――申し訳ありません、少し……宜しいでしょうか……先程から、貴方は魄くんが王花様をたぶらかしていた、と言いますが―――その明確な証拠はあるのですか?」
「……っ……ゆ、尹医師……っ……貴様には関係なき事だろう!?そもそも、貴様とてΩではないか……少しばかり優秀だから医師として務められているとはいえ、貴様もその魄とかいう者と同様だ―――本当ならば存在意義さえない者同士、慰め合っているのか?ああ、それとも貴様が特意の色仕掛けで―――貴様とて、その魄とかいう者を――たぶらかしておるのか?」
「…………」
そんな事を王花様の護衛官から言われても、尹医師は怒ったりはせず―――冷静な様子僕を見つめてから穏やかな笑顔を僕へと向けてくれる。目の前にある玉座に座っている屍王に頭を下げてはいるものの、横目でチラリと一瞥することで、それだけは確認できた。
「ええい、もうよい……尹医師の言う通りだ。儂は―――明確や証拠なく、罪を与えたりなどはせぬ―――白守子の魄とやら、面をあげよ―――」
「か、畏まりました―――偉大なる屍王様。」
僕がおそるおそる怯えながら面をあげると、そこには―――意外にも優しそうな笑みを浮かべる威厳ある屍王がいた。
「―――我が息子、王花を……これからも宜しく頼むぞ―――さあ、これにて儂の御前会議は終いだ―――」
「も、もったいなきお言葉―――ありがたく頂戴致します―――偉大なる屍王様――」
屍王様が御前会議の間から出て行き、途端に周りの守子達が眉を潜めながら、僕に悪意の視線を向けてくる中―――ふと、それとは違う何ともいえないような好奇の視線を感じてそちらへと遠慮がちに目を向ける。
―――優秀な赤守子として王宮内で噂されている燗喩殿とバッチリ目が合ってしまったのは、それが初めての事だった。
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