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第6話
すると、目が合った途端に反射的に目を背けた僕の方に――ゆっくりとした足取りで燗喩殿が歩んできたため、尚更周りの守子達の好奇と侮蔑の視線が僕へと突き刺さる。
(王花様も、それに―――僕になにかと意地悪をするさっきの護衛官と、その護衛官を従えている……黒守子の世純様がいるというのに……ここから逃げ出そうか――いや、相手は実質守子達を纏めている燗喩殿……それでは余りにも失礼すぎる……仕方ないか)
「あ、あの……僕に何か……御用でしょうか?」
「そちの名は……魄といったな―――なんと、美しい名前だ。しかし、それに反し……そちの顔ななんとも醜きものよ―――」
驚きながら目を丸くしつつ側に寄ってきた燗喩殿へと尋ねる僕の顎を、愉快げに微笑みかけてくる彼は何の躊躇もなくおもむろに引き上げ―――、
「いきなり―――な、何を……っ……んむっ…………!?」
周りの者達の存在や好奇と侮蔑の視線など―――まるで気にする様子もなく、唐突に燗喩殿は己の唇を戸惑いの表情を浮かべたままの僕の唇へと重ねるのだった。
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