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第8話

「さすがは優秀な赤守子として屍王の寵愛を受け、腹の底では我々を見下すという度胸のある燗喩殿ですな。まさか、劣等種のΩであり―――身分の低い魄を庇うだけでなく皆の面前で口吸いをするとは――いやはや、我々には到底真似出来ませぬ―――」 「全くもって世純様の仰る通りでございますな―――しかし、赤守子の燗喩殿の事はともかくとしても……流石は淫乱な尹医師と共にいるようなΩの劣等種……燗喩殿を厭らしく誘うとは―――その淫乱な体、私が味見してみたいものだ」 先程の護衛官が―――下卑た笑みを浮かべながら、僕を見つめてきた。途徹もない嫌悪感を抱きながらも、ふっと音もなく側に現れた王花様に気を取られて―――それどころではなくなってしまう。 「…………」 ―――王花様は何も言わず、悲しさと怒りとが入り交じったような複雑な表情を浮かべながら僕を見つめると、そのままフラフラとした覚束ない足取りで御前会議を行った部屋から出て行った。 「お、お待ち下さいませっ……っ……!!」 「…………王花は―――見境なく男を誘うようなお前の言葉など聞く気はないようだよ……淫乱白守子のお前は―――そこの護衛官のお相手をするのがお似合いじゃないの?まあ、吾なら――そんななのご免だけどね――」 慌てて王花を追いかけようとする僕を引き止めてから、ぼそりと耳打ちする者がいた。 ―――それは、全身を黒い布で覆い……今までその素顔を皆の面前に表した事がない黒子と呼ばれている王花専属の付き人だったのだ。

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