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第12話

◇ ◇ ◇ ◇ 今宵は曇り空のせいなのか、冬ではないというのに思わず身を震わせてしまう程に夜風が冷たい。 とある目的の場所へと辿り着いた僕は―――ぴたり、と足を止めた。 立派に咲き誇り、ひらひらと淡い桃色の花びらが舞っている―――王宮にそびえ立つ桜の木下で僕はある人物が現れる事を、切に願いながら 桜の木の幹に体を預けつつ、その場に座り込むのだった。 ―――ジャリッ…… 「わ、王花様―――っ……来てくださったのです……か……っ……!?」 「これはこれは……淫乱なΩの劣等種の魄が……何故に、このような場所で……こんな夜更けにいるのですかな?ああ、もしや……気高き王花様をたぶらかし逢い引きの約束でもしていたのか?」 地面の玉砂利を踏む音が聞こえて、僕は期待に目を膨らませながら―――音の方へと目をやった。愚かな僕は―――その時は、王花様が桜の木の下にいる僕へ会いに来て下さったと勝手に思い込んでいたのだ。 しかし、そこに立って僕に対して侮蔑の表情を浮かべつつ、下卑た笑い声をあげていたのは―――世純の取り巻きの一人である……あの護衛官だったのだ。

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