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第13話
「あ、貴方こそ……こんな夜更けに、何ゆえにこんな場所まで……来たのですか?」
「―――とある方から、お主がここでよく王花様と会っていると聞いていたものでな……それが真実なのか興味本意で確かめに来ただけだったが……」
ふいに護衛官の男が―――口角を歪めつつ、上を見上げて満足そうな表情を浮かべる。
「たった今―――その目的が変わりそうだ……愚かな優劣種のΩのお主にも分かりやすく教えてやろう……今宵は、久々の満月だ―――」
「……ま、満月……!?」
曇り空のせいで―――雲の合間に月が隠れていたため、今宵が満月だとは思いもしなかった。
いや、それだけではない―――。
普段は満月付近になると起こる頭痛と目眩が―――今回に限ってなかった事も僕が油断してしまった原因ともいえる。
「さて、淫乱な医師と王宮内で噂されている尹医師と同類のお主の体―――じっくりと味見させてもらうぞ?残念ながら―――王花様は此処にはいないようだな……それもそのはず……王花様は―――行方不明となったからな」
「な、何を……何と仰ったのです……王花様が―――行方不明!?」
「―――喧しいぞ。その五月蝿い口を閉じよ……淫乱で劣っているΩめ。王花様の事は―――我々に任せておくがよい……今頃、我の部下である輩が必死で探しているだろう。まあ、お主はそんな事など考えるず我の愛撫に矯声をあげるがよい」
グッ――
――――ドサッ
下品な笑みを浮かべ、息を荒くしながら醜悪な顔を此方へと向けてくる護衛官の男が力強く僕の体を引き寄せ、そしてそのまま―――立派に咲き誇る桜の木の真下の硬い地面へと強引に押し倒されてしまうのだった。
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