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第14話

「な、何をっ……こんな事をしている場合ではないでしょう―――この国の王子の……王花様が……行方不明なのですよっ……」 「―――ふん、屍王様のような威厳のない王花様の捜索など……我の駒……いや……部下に任せておけばよいのだ。まあ、我も鬼ではないゆえ――無論、王花様の行方は気になるといえば気にはなるが……今は、お主のその象牙のような白い肌の滑らかさがどのようなものか――そっちの方が重要だ―――」 と、含み笑いをしながら押し倒してきた護衛官の手が器用に上衣の胸元をはだけさせると、そのまま無防備に曝されてしまった僕の胸部付近を厭らしい手つきで撫でてくる。 その行為に―――言葉にも出来ない程の嫌悪感を抱き、精一杯の力で護衛官から逃れようともがいてみた僕だったが――さすがは護衛官という役職に就いているだけあって男の力は―――僕の力よりも圧倒的に強い。 「―――ふん、抵抗しても無駄だぞ?こんな場所に……しかも、こんな夜更けに来るのは……お主と今は行方不明中の王花様くらいだ―――っ……」 鼻息を荒くし、興奮しながら僕の胸元から――今度は下半身へと手を伸ばすと厭らしい手つきのまま一番触れてほしくない箇所を撫でたり――握ったりしていたが、ふいに忌々しい護衛官の手がぴたりと止まり―――とある場所を見つめ続ける。 「……っ…………!?」 手つきだけでなく、人形のように固まってしまった護衛官の男の異様な様子を見て――僕までもが呆然としながらも彼が見ている方向へと目を向けようとした時―――、 「あ、ああ……な、なんという…………」 それだけを、ぽそりと呟くと―――何故か、慌てた様子で僕から離れてそのまま何処かへと脱兎の如く走り去ってしまった。 (な、何なんだ……いきなり走り去ってしまって……でも、助かった―――これで尹先生から貰った薬を飲めば……なんとか満月の発情期をやり過ごせる―――) はだけた上衣をさっ、と直してから昼間に渡された発情期よけの丸薬を飲み―――頭上で見事に咲き誇っている桜を見上げていた時―――、 「おい、おい……お前、魄――――だよな?」 「えっ……そ、その声は―――えっと、誰でしたっけ……」 見事に咲いている夜桜に見とれているせいで、ぼんやりとしていた僕の目の前に聞き覚えのあるような声で話しかけてきた少年が、いつの間にか立っている事に―――今更、気付くのだった。

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