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第18話
「……その間抜け面は止めよ。それに、私が貴様のようなΩを本気で相手にする訳がなかろう―――まあ、遊びとして相手にする事はあるかもしれぬがな……それよりも、これは貴様の物か?桜の下で騒ぎを聞きつけ駆けつけた際に―――これが落ちていた。」
「そ、それは……っ……それをお返しくださいませ―――大切な物なのです……」
それは以前に、ここ尹先生の寝で物色している内に―――思わず懐に隠してしまった赤く装丁された薄い本だった。おそらく、僕が王花様の無惨な光景を見つけた際に失神してしまった時に―――足元に落とし、それを後に駆けつけてきた世純が拾い上げたのだろう。
―――バサッ!!
それを奪い返すために慌てて身を引き起こし、世純の方へと手を伸ばすと―――運悪く、そのまま床に赤く装丁された薄い本が落ちてしまう。
「まったく―――そんなに重要な本なのか、これは―――どれどれ…………」
「お、おやめ下さいませ―――世純様……それは……僕のものでは……っ……」
隣で気持ちよさそうに寝息をたてている尹先生を起こさぬように必死で声を抑えつつも、世純が本を捲ろうとするのを止めようと奮起していたのだが―――ふいに、世純がページを捲る手を一度止めた。そして、何故か神妙そうな顔つきで―――僕の顔を凝視してきた。
「せ、世純……様?如何なさいましたか―――」
「貴様―――これを読んだのか?」
「な、何故……そのような事を―――?」
「いいから……私の問いに答えよ――この中身を見たのか?」
「い、いいえ……私は……未だ中身を見てはおりません……それに、何が書かれているのですか?」
―――パサッ
世純が神妙な顔つきをしたまま、僕の方へ赤く装丁された薄い本を軽く投げてきた。そして、世純は目だけでその本を拾って中身を見ろ、といわんばかりに僕に合図すると―――そのまま僕の隣にいて眠っている尹先生をちらり、と一瞥するのだった。
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