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第19話

「…………」 「…………」 僕と世純というこの男は―――元々、親しき仲という訳ではない。だからこそ、世純に悪態をつかれている訳ではない今の状況では自然と無言になってしまう。 しかし、おそらく――この頑固で神経質な面がある世純という男は僕がこのまま赤く装丁された本の中身を確かめなければ―――このままずっと此処にいるばかりか、無言を貫き通すだろう。 ―――そんな状況は……とてもじゃないが、ご免だ。 「か、畏まりました……この中身を、見れば宜しいのですね?」 ――ペラ…… ペラ……ペラ――― その後、世純の頑固で神経質という性格に根負けした僕が本をゆっくりと捲る音だけが―――再び静寂に包まれた寝所の中に響くのだった。 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 今にして思えば、この時に僕が世純から赤く装丁された本の中身の確認をしようと決断した事も―――僕や周りの人々の人生を狂わす歯車が回ったきっかけ(分岐点)となったのだろう。 ―――あの時、僕はあの赤く装本された本 中身を確かめるべきではなかったのだ。 そうすれば―――後々、僕や僕を取り巻く周りの人生を狂わすどころか―――今まで比較的平和だった王宮内を狂わす事も―――なかったのかもしれないのに。 しかし、今更―――後悔した所で遅い。 (過ぎ去った時は―――永遠に巻き戻せない) (するべきでなかった決断を―――再びし直す事はできない) 日記を続ける手を進めるとしよう―――。

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