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第23話
と、その時だった――――。
「せ、世純様―――世純様……此方にいらっしゃいますか?夜分遅くに申し訳ございませぬ……じ、実は……またしても、騒ぎが―――起こりまして……至急、来て頂きたいのです」
「今度は何の騒ぎだというのだ……っ……」
「そ、それが……私如きの口からはとてもじゃないですが、説明する事が出来ませぬ。と、とにかくですね……今すぐに見に来て頂ければ一目瞭然ですゆえ――お願いでございます、私と共に―――中庭に来て下さいませ」
急に息を切らした様子の世純の取り巻きであろう少年守子の慌てている声が襖の外から聞こえてきた。そのお陰で僕に一心に向けられていた世純の目が寝所の襖の方へと移る。
その隙に―――さっ、と衣服を着ている僕の事などお構い無しだといわんばかりに世純が気だるげに立ち上がって、ゆっくりとした足取りで襖の方へと向かう。
「それで……一体、何事があったというのだ!?簡潔でよい、重要な事柄だけ述べよ――お主はそこまで能無しではなかろう」
「で、ですが―――その……以前、そこにいる魄とやらを淫乱なΩだと言って陰口を叩いていた護衛官の方が……中庭の池にて――何者かに殺害され―――今しがた、遺体にて……発見されたのです」
「な、何だと…………!?」
世純に半ば強引に言わされて、気まずそうにその少年守子は新しく起きた事件とやらの要点を告げる。目を丸くしながら驚いている世純ではないが―――僕にとってもこの事は予想外だったので呆けてしまう。
しかし、僕はあの蔑んできた護衛官の男が中庭の池にて発見された、という事実に対して驚きはしたものの―――心の奥底では別の感情が渦巻いている事に気付いてしまったのだ。
(いい気味だ―――あの護衛官の男め……今まで散々、僕や尹先生……いや母上を蔑んできた罰が当たったのだ―――これは当然の報いだ……)
僕の心の奥底で―――今まで成りを潜めていた【白い鬼】が冷酷に囁いてくるのだった。
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