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第26話

「か、燗喩殿……何ゆえ、ここにいらっしゃるのでございますか……確か、御前会議の準備をしていた所では―――?」 「それは他の者達に任せておる。それに、私の付き人の朱砂(すさ)が、この騒ぎを聞きつけ私に教えてくれたため此方に急いで駆け付けたのだ。無論、それだけではなく貴様が愛して止まぬ世純殿が……眠赦は何処にいる、と騒ぎたてていたぞ……今すぐに戻らねば世純殿の信頼が崩れ去ってしまうであろうな」 じろり、と忌々しそうに己を睨み付けてくる眠赦の事など目に入らないといわんばかりに燗喩殿は床に這いつくばって情けない呻き声をあげている僕を気にかけてくれるのだ。 「……っ………赤守子だからと調子に乗るのもいい加減にしてほしいものですね……貴方など――世純様の……足元にさえ及ばない――っ……」 「貴様こそ、調子に乗るでない!!今すぐにその汚い足を―――私の魄から退けよ!!」 普段は冷静沈着で多少は、お茶らけてはいるものの滅多に他人に対して怒鳴りつける事などない燗喩殿が――おろおろと戸惑っている皆の前で、僕の事を庇い流石にびくり、と体を震わせて戸惑っている眠赦を大声で怒鳴りつけてくれたのだ。 「い、行くぞ―――皆の者。世純様が――我らをお待ちになっているとあれば……無下にする訳にはいかない」 「は、はい……眠赦殿の仰せのままに―――」 床に這いつくばったままの僕と――此方へ駆け寄ってくる燗喩殿を憎らしげに睨み付けた後、眠赦とその取り巻き達は―――急ぎ足でその場を後にするのだった。 「―――魄よ、平気であるか?」 「は、はい……あ、有り難う……ございます――燗喩殿」 優しく微笑みかけながら、遠慮がちに手を掴み引き上げてくれる燗喩殿に対して恋心を抱いていると確信した僕は―――顔を真っ赤に染めて彼をじっと見つめてしまうのだった。

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