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第27話

「魄よ―――お主、顔が……林檎のように真っ赤になっているぞ……よもや、熱でもあるのではないか?」 「だ、大丈夫です……燗喩殿……あの、失礼かもしれませんが貴方様の方こそ―――少しお疲れなのでは?」 真っ赤になっている僕の顔を心配そうに覗き込んだ燗喩殿は―――そのまま、己の手をぴと、と僕の額に乗せながら問いかけてきたため少し緊張しつつも、よく見てみると疲れきった表情を浮かべている彼へと尋ねる。 「ああ―――公務が重なっていてな……それよりも、お主……体調が優れぬのなら私が――お主を抱きかかえ、御前会議が開かれる部屋まで連れていってやるぞ―――さあ、私の元に来い!!」 「え、ち……ちょっと―――か、燗喩殿……僕は平気ですと申したのに……!!」 燗喩殿の公務が忙しくなったのは―――王花様が短剣を胸に突き刺され命が危うくなった事件と、護衛官の男の遺体が中庭の池から発見された事件が同時期に重なり合ったからだ。 そして、その二つの事件には―――どちらも僕が関わっている。 王花様の事件で桜の木の側で倒れている彼を発見したのは僕なのだ。 護衛官の男が中庭の池で遺体にて発見された事件では直線的には関わりがないものの周りの者達から彼を手にかけた犯人なのではないかと僕は疑われている。 そんな事をもんもん、と悩んでいると燗喩殿がいつの間にか足音もなく僕の側に近付いてきて―――ぽん、と頭に大きな手をのせるとそのまま尹先生と同じように優しく撫でてくれるのだ。 すると、尚も顔を真っ赤にしながら遠慮している僕の体を―――燗喩殿は半ば強引に両腕で抱え、異国にて姫様抱っこと呼ばれている状態で周りの目などお構い無しに廊下を進んでいき、そのまま御前会議が開かれる部屋まで連れて行かれるのだった。

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