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第30話

「ほう………何ゆえに燗喩が――王花を襲ったと言い切れる?その根拠を―――お主の口から余に申してみよ」 「畏まりました、偉大なる屍王様。燗喩殿は―――そこに座っている白守子の魄を随分と特別扱いされており慕っておられます。燗喩殿と同様に魄を慕っていた王花様が邪魔となり―――それゆえ、燗喩殿は嫉妬から王花様の存在を消しさろうとした……と―――そう申しあげたいのでございます」 「燗喩殿がこの魄という白守子を慕っていた証拠もあります……現に、この燗喩殿が―――皆の前で魄に口吸いをしている現場も……この目で、しかとご覧になりました―――のう、皆の者?」 すら、すらと―――迷う事なく世純は目の前の玉座に座っている屍王様へと話していたが、ふいに周りの守子の意見を問うように部屋中を見回していく。 しかし、王の許可なしに勝手に話す事は基本的に許されないため、周りの守子達は戸惑いつつも―――やはり、無言なのだ。 「よい、皆の者―――申してみよ」 どこか呆れたように屍王様は、それだけを言う。 「た、確かに―――世純様の仰った通り……その者に口吸いをする現場を目撃しております」 「わ、私もです」 「世純様の仰る通りです――――」 どよめきを隠せなくなった周りの守子達が一斉に世純の言葉を指示するような言葉を口にしてきたため、僕は真っ青になりつつも――渦中の話題にのぼっている燗喩殿をちらりと一瞥する。 (こ、この流れは……よくない……只でさえ燗喩殿はその優秀さから周りの守子達に―――嫉妬されている……それゆえ、その次に身分が高い世純を指示する者も多い―――このままでは――燗喩殿にあらぬ罪がかけられてしまう……) いつも通り――――冷静な燗喩殿は飄々としており、戸惑いさえも表情に現さない。 「お、お待ちくださいませ……燗喩殿は―――王花様を手にかけた犯人では……ありません」 このまま黙っている事など――――僕には出来なかった。そして、自然と燗喩殿を救うために屍王へ向かって叫んでしまうのだった。 「…………喧しい白守子だね―――燗喩が王花を手にかけてないという明確な証拠はあるの?それに……お前だって王花を手にかけた張本人かもしれないじゃないか―――お前のせいで王花はああなったんだ……お前がっ……」 「……っ…………!?」 今まで無言だった黒子の冷酷な言葉を聞いて、口をつぐんでしまった僕は悔しいが何も言えなくなってしまった。確かに、僕が王花様の運命の番になりたいと言った時に素直にその願いを受け入れていれば―――こんな事にはならなかったかもしれないからだ。 「私でございます!!私が――――王花様の胸に短剣を突き刺さし……あわよくば始末しようとしました。その者―――魄は王花様を手にかけた犯人ではございませぬ」 その燗喩殿の声は僕を絶望に突き落とすには十分な程に―――凛と部屋中に響き渡るのだった。

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