40 / 151

第41話

「な、何故……翻儒が―――黒子様とこの場にいらっしゃるのですか?」 「何故、吾が惨めで汚ならしい犬同然のお前と一緒にいるかだって……翻儒、吾の犬であるお前が―――直接、その口でこの愚かな魄に教えてやれば?何故、惨めで汚ならしいお前が―――今や屍王と対等な立場にいる吾と共にいられるのか……教えてあげなよ」 くすり、と厭らしく口角をあげて笑うと黒子は側で人形のように無表情のまま、それでいて体を小刻みに震わせて怯えている翻儒へと冷たく言い放ってきた。かつて僕と共に桜の木に登りながら愉快げに笑顔を浮かべていた翻儒の面影など―――その怯えきっている様子からは微塵も感じられなかった。 「……く、黒子様は―――俺の……主人なんだ」 僕とは相変わらず目を合わせずに、それだけを淡々と答える翻儒。 ―――どかっ 「あ~……苛々する……お前は―――そこらの犬よりも、よっぽど愚かだ……吾の事は―――ご主人様と呼べと何度言ったら分かるの?お前には……厳しい躾がいるようだね――そうだ、お前……そこまで体を震わせているのは、厠に行きたいせいだろう?」 もじ、もじと――――体を捩らせている翻儒の様子を敏感に察知した黒子が意地悪げな笑みを浮かべながら―――確認するように翻儒へと尋ねると無言で主人である黒子へと頷いたのだ。 「―――じゃあ、このまま下衣だけを脱いで……幼なじみとかいう魄の前で……小水を垂れ流しなよ。吾の犬であるお前には……ちょうどいい罰だろう?」 黒い鬼のような男は―――意地悪げな笑みを浮かべて、満足に抵抗すらしない翻儒を睨み付けると冷たい口調で無慈悲な命令をするのだった。

ともだちにシェアしよう!