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第43話

「うるさい………うるさいっ!!吾は王花ではない……この王宮に来てから―――皆が皆、そればかりを口にし、あらぬ事を噂する……けれど、吾は王花でも……ましてや黒子でもない……吾は、びは―――」 ふと、先程までは勝ち誇ったような表情を浮かべて僕と翻儒を見下していた黒子の顔に余裕がなくなり―――癇癪をあげて牢中に響き渡りそうな大声で叫ぶ。 「その辺で―――止めよ!!」 と、唐突に―――癇癪をあげる黒子に負けずとも劣らない程に大きな声が辺りに響き渡った。 ―――世純だ。 世純の思わぬ出現により、僕と翻儒だけでなく先程まで癇癪をあげていた黒子さえも黙り込む。 そのせいで牢屋の中は静寂に包まれてしまう。 「―――黒子よ、流石にお遊びが過ぎる。それに、お主も……興が削がれただろう。今宵は私の寝所にて共に過ごそうではないか―――さあ、此方へ来るがよい」 「…………うん」 静寂を打ち消したのは―――突然牢屋に現れ、静寂を誘う原因を作った世純張本人だった。 世純は呆然と立ち尽くす僕や翻儒などには目もくれずに、そのまま一直線に黒子の方へと歩いて行くと、小刻みに体を震わせながら嗚咽を漏らす黒子の体を抱き寄せ―――所在なさげにする僕と翻儒を残したまま共に牢屋から出て行ってしまうのだった。

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