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第45話

◆ ◆ ◆ ◆ 世純は―――昨夜、黒子が牢屋にいる魄と、同じく白守子で魄の幼なじみの翻儒という者にちょっかいをかけにいったのを追いかけた。 そして、結果的に癇癪をあげた黒子を制止した後、己の寝所に彼を招き入れたがその後に重要な公務が残っていたのを思い出してしまった。 そのため一度、己の自室から出て行き、すやすやと眠りについている黒子を優しい表情を浮かべて、寝息をたてている彼の唇に己の唇を重ねて愛しそうに本来の雪のように白い黒子の髪を撫でると―――起こさぬように慎重な足取りで公務室から出て行った。 その途中―――、同じく公務をしているのか魄の母である尹医師と……そして、隣には顔を真っ青にして俯いている翻儒とかいう白守子とすれ違う。 おそらく、黒子にいいように見下され―――翻儒とかいう者は体調でも崩したのだろう。それならば、医師である尹と白守子という身分違いの二人が一緒にいるのも納得できる。 すれ違いざまに形だけ礼をしてから――振り向くこともせず、そのまま公務室へと歩んで行く。 ―――そして、つい……仕事を終えて疲弊してしまった世純は公務室でそのまま泥のように深い眠りについてしまうのだった。 ◆ ◆ ◆ ◆ 「せ、世純様……世純様――――眠赦でございますっ……大変でございますっ……すぐに来て下さいませ!!」 「ん………何だと言うのだ―――想像しいな」 世純が泥のように深い眠りから現実へと戻ってきたのは―――公務室の扉の外で騒ぎたてる部下の眠赦の大声を聞いたからだった。 「し、失礼しました……で、ですが……またしても一大事が起こったのです!!と、とにかく……共に来て下さいませ!!事は一刻を争います」 ―――世純は一大事と聞き、妙な不安を覚えつつも騒ぎたてる部下が待っている公務室の外へと急ぎ足で向かうのだった。

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