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第51話
◆ ◆ ◆ ◆
眠赦から裏切られた忌まわしい御前会議から、幾日経ったのだろうか――。
此処は牢であり、しかも罪人となった己に時刻を教えてくれる者などいない。そもそも、今までそのような雑務をしてくれていたのは忌まわしい御前会議で世純を裏切った張本人の――眠赦だったのだ。
此処にいるのは、かつて黒守子で赤守子には敵わないとはいえ――それなりに地位があった者である世純に対して、悪い意味での好奇の目を向けてくる牢屋守の輩だけだ。
まさか、今までは己よりも身分が低い輩だと下に見ていた奴らから――こうして好奇の目を向けてこられるとは夢にも思わなかった。
「……おい」
「……まあ―――そう焦るな」
そんな暗い気持ちを抱きながら、これ以上は余計な事を考えるまいと――土床に敷かれた布団の上に横たわり、とにかく寝て忌まわしい過去の事は忘れてしまおうとしていた世純の耳に牢屋守の男達が何やら小声で囁き――、
「な、何を……何をしているのだ!!?」
その二人の牢屋守の男達が――布団の上に横たわって眠ろうと目を固く閉じていた世純の体の上へと、のしかかってきた。そして、牢屋守の男達は――ここぞとばかりに二人がかりで世純が暴れないように両腕を纏めあげて嫌悪感から震えているその身を力強く拘束してくるのだ。
狭くカビ臭い牢屋の天井から水滴が何粒か世純の頬へと落ちると、下品な笑みを浮かべながら男のうちの一人が生暖かい舌で、べろりとその水滴を舐めあげる。
「……はっ、何ってそりゃあ―――なあ?」
「……おやおや、賢い黒守子……おっと――今は罪人の世純様なら、これからオイラ達が何をするか……分かっている筈でしょう」
―――その牢屋守の男達の会話を聞いて、これから何をされるのかと容易に察する事が出来た世純は余りの嫌悪感と憎悪感から小刻みに体を震わせるのだった。
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