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第55話

「か、燗喩が―――何処に流刑されたか、だと!?お主……眠赦がこのような事になったというのに……何ゆえ、そのような事を申すのだ?」 「……それは、僕が貴方様にお聞きしたいです――世純様。貴方様とて、無実な燗喩殿に一方的に罪を被せるという残酷な事をなされました。世純様―――僕は鬼となったのでございます……燗喩殿の居場所を知る為ならば、僕は鬼になると誓ったのです。ある方の言葉が僕を後押しして下さいました。」 「……何ゆえ眠赦を此処へ突き飛ばしたのだ――それ以外にも我から燗喩の居場所を尋ねる方法は――あった筈……」 世純は石に後頭部を打ち付け、そのまま事切れてしまった――かつての部下へと僅かばかり哀れみの表情を浮かべつつ魄へと真剣に問いかける。 「…………このくらいしなくては、貴方様に僕の言葉は届かないと思いました。それに、貴方様を失う訳にはいかなかった。僕は燗喩殿を直接流刑に処せと命じた貴方様の口から……どうしても聞きたかったのです。無論、これが許されない事は分かっています。全てが終わりをつげたら……必ずこの罪を償います。だから、どうか、世純様……燗喩殿が何処にいるのか教えて下さいませ!!」 ――目に涙を溜めて、嗚咽を漏らしながら魄は横たわったままの世純にすがり付きながら必死で訴えかける。 「僕は……僕は燗喩殿を――心の底からお慕いしているのですっ……どうしても救いたいのでございますっ……」 「…………この拘束を解け。そうしなければ話にならん。いいか、我は燗喩の居場所を教えるだけだ――それ以外は一切手助けはしないぞ……裏切り者とはいえ――眠赦の命を奪われたのだからな」 ―――あまりの魄の剣幕に根負けした世純がそう告げると、魄は申し訳なさそうに深々と世純に土下座をした後で彼の拘束を解く。 「……よいか――燗喩はこの王宮の付近にはおらぬ。奴がいるのは――この離れ小島にある《逆ノ目廓》という訳ありの遊郭だ。何故、訳ありなのかは――行けば分かる。奴は此処で無理やり働かされている……それ以上は我は話さぬ。無論、止めもせぬ。止めた所でお主は我の言う事など聞かぬだろうからな――」 「…………ありがとうございました。世純様――眠赦様の件、どうかお許し下さいませ」 拘束を解いた後で地面に落ちていた木の枝で、わざわざ地図を書きながら説明してくれた世純に対して感謝の気持ちを告げると、ぎゅっと手を固く握りしめ――ある決意をするのだった。

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