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第58話

◇ ◇ ◇ ◇ 世純様から燗喩殿牢屋の外から出るのは、骨が折れる作業だった。 しかし、それでも見張りである牢屋守の男達の目をかいくぐり、何とか出られたのは――牢屋へと続く逃げ道へ進む為に、僕と共に抜け穴を掘ってくれた世純様がいてくれたおかげだ。 しかも、世純様はちゃっかり牢屋から外へと繋がる逃げ道がある事を知っていたのだから、彼には頭が上がらないと感服してしまった。 そんなこんなで――牢屋から外へと出る事は出来たのだが、これからが大変だ。王宮の建物の周りに何十人もいる警護人達の目をかいくぐり、塀から王宮外へと出なければならないのだ。 何とか良い案がないか、と決してよくはない頭を捻りながら考え込んでいた時――ある一つの考えが浮かんできた。 (そうか、あの王宮にそびえ立つ桜の木に登ればいい……王宮外の方へと何ヵ所か太めの枝が伸びてるから、僕らが桜の木に登っていると警護人に気付かれさえしなければ……そのまま枝を伝って王宮外へ出れるはず……) ――幼い時に、翻儒と何度も木登りをした桜の木。 ――心を壊される前までは、王花様と何度も逢瀬を重ねてきた桜の木。 まさか、その立派に咲き誇る桜の木が――逃亡の手段として役に立つとは思いもよらなかった。 無論、うまくいくとは限らない。 うまくいかなければ、再び罪人として牢屋に入れられ――下手すれば大罪人になってしまう。 (そうなれば……燗喩殿も……王花様も救えない……どうする、どうする……) ――その時だった。 考えあぐねている僕の手を――側にいる王花様がぎゅっと固く握りしめてきたのだ。 そして、その事がきっかけとなり――僕は王花様と共に桜の木を利用してこの王宮から外の世界へと出る事を決意し直すのだった。

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