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第63話

(し、しまった……こんな、店を出る直前で油断してしまうなんて……っ……) 小銭を拾ってくれた男の童の甲高い声のせいで店でくつろう客達や、道をすれ違う者達の好奇の目が此方へと突き刺さる。 中には、塵まみれとなった僕や王花様の出で立ちに侮蔑の目を向ける者達もいて、ばつが悪そうにその場ち立ち尽くしている僕らの事を庇うためなのかは知らなかったが、慌てて男の童が僕の手を引っ張ると何も言わずに人目のつかなそうな場所へと連れてきてくれた。 「あ、あの……ありがとう……その……君の名は―――なんて言うの?」 こんな見知らぬ土地で出会ったばかりの男の童に名を聞くなど、止せばいいのに僕はなんとなく―――僕らを気遣ってくれた童の名が気になり、人目がなさそうな場所まで走ってきたせいで息を切らしながらも少しだけ遠慮がちに尋ねてみた。 「……おいらか?おいらの名は―――」 「目白(めじろ)・薊―――こんな所で油を打っているとは、どういう訳でありんすか?わっちが神室屋の前で首を長くして待っていたというんに……。おや、その童らは―――何者でありんすか?」 僕らを気遣って助けてくれた男の童が問いかけに答えようと口を開いて名を告げようとした途中で―――またしても新たな声が聞こえてきたため、僕は驚きながらもその声の主へとおそるおそる目を向けるのだった。

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