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第67話
「おい、鈴女・露草!!お前―――何をしているんだっ……鈴女ごときが……廓の主人である儂に楯突くんじゃねえ!!」
――ひゅっ……
またしても、怒りを露にしている旦那さんと呼ばれた男が鬼のような形相で手に持っている鞭を頭上に降り上げると、今度は最初から燗喩殿らしき男性の体を目掛けて腕を振り下ろそうとした。
――びしっ……ばしっ……
「ぐ……っ…………!!」
びり、びりとした焼けるような鋭い痛みが僕の体を襲う。しかし、その露草と呼ばれた男の人を守るために――自然と体が動いていた。そして、僕は――鞭打ちをされる事で襲いかかってきた余りの痛みから涙を溢れさせつつも真剣な眼差しで露草と呼ばれた男の人の顔を真っ直ぐに見つめた。
―――悲しげに僕を見つめてくる……燗喩殿の……いや、今は鈴女・露草という男の人の瞳。
その瞳を真っ直ぐに見つめた瞬間、王宮にいた頃とはかけ離れた質素でボロ布のような着物を身に着けている鈴女・露草と呼ばれた男の人が――愛しい燗喩殿だと確信するのだった。
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