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第68話

「……旦那さん、そこまででありんす。それ以上、この童と鈴女・露草を鞭打ちすることは――わっちが許さんでありんすよ?それに、人通りも多くなってきたんし……はよう廓に戻った方がいいんでありんしょう?満月・菫花魁も――旦那さんを首をなごうして待ってるんし」 「ち……っ……そうさな……弦月・水仙花魁がそう仰るんなら廓に戻るとしよう。おい、そこの餓鬼共――廓に戻ったら、まずは行水するからな……ったく、塵まみれで汚えったらありゃしねえ――おい、鈴女・露草……呆けてんじゃねえ…水仙花魁の荷物をお持ちしろ!!」 此処では鈴女・露草と呼ばれている燗喩殿が――旦那さんの怒りを露にしている声を聞くと、びくりと体を震わせる。まるで、王宮内にいた頃の赤守子だった彼の立ち振舞いとは――別人のように今の燗喩殿は怯えきっているのだ。 もしかしたら、此処では水仙花魁や、目白・薊、旦那さん、そして弦月・水仙花魁よりも圧倒的に身分が低いのかもしれない。 逆ノ目廓に向かう道中で――それについて答えてくれそうな弦月・水仙花魁か薊という童に聞いてみようと思った。 おそらく、逆ノ目廓に来る事に対して文句ありげに僕と王花様を見つめてくる旦那さんは教えてくれないだろうから――。

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