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第70話

「お前さん……身を張ってまで、その雪のように真っ白な美しい童と鈴女・露草を庇うようなたまなのに――そんな些細な事を気にするんね?いいから、受け取ってくれなんし?めんこいお前さんなら――きっと似合うとわっちは思います」 「あ、有難うございます……大切にします」 「お礼はいいんよ……あ、それと――これだけは、これから見習い花魁になるめんこいお前さんに忠告しとくけど……廓に戻ったら満月・菫花魁には目を付けられんように注意しときや?」 ―――満月・菫花魁…… 確か、先程――怖い旦那さんの口からも、そんな言葉が出てきたのを思い出す。しかし、何故気をつけなければならないのだろう、と怪訝に思い、小首を傾げている僕の様子に気付いた水仙花魁が――満月・菫花魁の事だけでなく、逆ノ目廓について大まかに教えてくれる。 弦月・水仙花魁曰く――、 《逆ノ目廓》の上級花魁には、主に三つの階級があるらしい。一番上の階級である最も気高き花魁は名の前に【満月】とつき、二番目の階級である花魁は名の前に【弦月】とつき、三番目の階級である花魁は名と前に【新月】とつくそうだ。 因みに、上級以外の中級・下級花魁は――全て纏めて【雲隠れ】と名の前につくらしい。 上級花魁は数多の花魁がいる廓の中でたったの三人しかなれず、選ばれた特別な存在なのだそうだ。それを踏まえてみると、先程の弦月・水仙花魁に対しての旦那さんの媚を売るようなへりくだった反応も妙に納得できる。 上級花魁の中には――、 一番目に位の高い【満月・菫花魁】がいて、 二番目に位の高い【弦月・水仙花魁】がいて、 三番目に位の高い【新月・睡蓮花魁】がいる。 そして一番位の高い【満月・菫花魁】は新人いびりをする悪名高い花魁なので、気をつけろと――水仙花魁は、こそっと僕に耳打ちしてくるのだった。

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