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第93話
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島の消防団の人々から外へ連れ出され、ごお、ごおと音を立てながら炎に包まれてあっけなく崩れていく郭の様を、ただただ呆然と見つめる事しか出来ない。
それは、ずっと過ごしてきた世界があっけなく崩れ失われてしまう様を眼前に突き付けられ、寝間着が汚れる事も気にせず地面に倒れながら泣きじゃくる他の元花魁達や、半狂乱になって訳のわからない言葉を喚き続ける元女将さんも同じなのだ。
すると、島の警護人に捕らえられた元水仙花魁が犯罪者を入れておく牢がある場所へと連行する前にゆっくりとした落ち着いた足取りで僕らの元へとやって来た。
彼は―――王宮から来たよそ者の僕、王花様、燗喩殿には何も言わず、真っ直ぐに薊の方へと足取りを進めてくる。
「薊―――よかったなあ、これでおめえが夢見てた王宮へ行けるやないの……そこの裏切り者達に着いていきゃあいい……わっちは、おめえのそのうじうじした陰気な面を見るのが死ぬほど嫌だったわ―――それじゃ、さいなら」
そう言って、薊の頭を優しく撫でてから―――彼は元睡蓮花魁と共に警護人達に連行されて行ってしまうのだった。
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