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第95話

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ――ちゃぷ、 ――ちゃぷ、ちゃぷ…… 「―――そういえば、おいら……おめえの本当の名前を聞いていなかったっちゃ……王宮に行く前に教えてくれっちゃよ」 「僕の名前は――魄。白い鬼と書いて――はくっていうんだよーー薊……王宮でも僕の友達でいてくれる?」 「もちろんっちゃ……魄は僕の―――親友なんだからっちゃね」 王宮へと向かう船で、にこり、と嬉しそうに笑いながら薊はそう言ってくれた。その無邪気な笑みを見るだけで、僕の心は晴れ渡っていく気がしたのだ。 そして、僕ら四人を乗せた木船は薊以外にとって懐かしい王宮という故郷へと真っ直ぐ、真っ直ぐと進んで行くのだった。 ◆ ◆ ◆ ◆ ―――いけない、また睡魔が襲ってきた。 このまま、我が子と共に寝てしまいたいという気持ちをぐっと堪え――筆を持つ手に力を込める。 これから逆ノ目郭から王宮へと戻ってきた私が如何にして過ごしたのか、そして――どのような嵐が王宮に吹き荒れる事となるのか、という事実を記さねばならないのに―――。 薊―――、 かつて私の親友だった男の子―――。 しかし、今は―――遠い所へと行ってしまった。 この狭い王宮内で暮らしているというのに―――心は私から離れ、どこか遠い所へと行ってしまった。 何故、そのような事が起こったのか――そして、それに至るまでの経緯と王宮に吹き荒れる事となる事件の詳細を、これからここに記すとしよう―――。 また、誰かが同じような事を繰り返さないためにも―――。

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